筆者は国立大医学部卒の麻酔医で喫煙者である。
冒頭より「日本男性の喫煙率低下と日本の出生率低下には統計学的に高い相関関係がある」ことを根拠に、「男がタバコを吸わなくなると女は子供を産まなくなる」という新説を展開している。ユニークで一理あるようにも見え、喫煙者の耳目を集めるだろう。
しかし、統計学における「相関関係」は「因果関係」を説明しない。筆者の主張は統計の誤用に基づいている。その一方で不利なデータに対しては、因果関係を示していない、と批判しており、自己矛盾に陥っている。このような論理の矛盾や誤認は本書に散見される。
本書は疑似科学の文学作品である。喫煙の益を本気で主張したいのであれば、著者は統計学など、自然科学の手法を再学習する必要があるだろう。ニコチンの依存性にもほとんど触れられていない。
喫煙を擁護する著書としてはやや古くなるが最後のタバコ論争(宝島社)、喫煙者のユーウツ(TOKIMEKIパブリッシング)のほうが内容も豊富である。