『タッチ』は、単なるスポ根マンガ・アニメではない。
原作・TVアニメ版ともに、れっきとした文芸物語なのだと思う。
3年間の光り輝くような高校生活を描く長編ストーリーだからこそ、終盤に向かう辺りでは、その感慨もひとしお。
第1部では、ギャグ連発のお笑い学園モノかと思わせて、最後には衝撃的な悲劇が待っているという、心憎い見事な演出。
達也と南が高校2年~3年になる中盤は、中休み的な要素が大きいが、その緩んだお笑い場面と、2人を取り巻く恋愛の微妙な揺らぎがあってこそ、次のクライマックスへと向かう大事なステップとなるのである。
そして、オープニングで『情熱物語』が流れ始める、第4部。
達也のたくましく成長した姿――弟のためにひたすら投げる、せつない執念――が、ただただ涙を誘う。なんていい兄貴なんだろう。そして、新体操のスターとして騒がれる一方で、そんなタッちゃんを見守る南ちゃんの複雑な想い。2人の心の中で、カッちゃんはいつまでも生きているのだ。
こんなに爽やかで熱血にあふれた作品、他を探してもないでしょう。
そして80年代だからこそ生まれ得た、その懐かしさは、いつまで経っても色褪せない。この時期の雰囲気を感じながら子ども時代を過ごした人は、タッちゃん・カッちゃん・南ちゃんとともに成長するのです。永遠に。
だから、2005年の秋に実写版で映画化されても、この感慨深さ、懐かしさ、そして大河ドラマだからこそ味わえる作品への愛着というものを、越えられるはずがない。これは、劇場版アニメ3作で失敗したのと同じで、3年間という時間の重さを、たった2時間の映画としてコンパクトにまとめられるわけがないのだ。続編のTV放映用に製作された「~Miss Lonely Yesterday あれから、君は・・・~」もまた、登場人物全員を出して“その後の『タッチ』”を描こうとしたが、ストーリー的には無理がある設定で尻切れトンボの感が否めないし、全体的に暗く希望もないラストで終ってしまっている。
ただ、かろうじて、最後の続編となる「CROSS ROAD 風のゆくえ」は、舞台をカリフォルニアに移して新天地へと向かう寡黙な達也の決意と、進むべき道の見つからないままスポーツ・カメラマンのアシスタントとして働く南の悩みが、当時の自分の姿と重なって、涙を禁じ得なかった。そして和也の存在も、決して忘れられてはいない。主題歌を担当した坂本サトルの歌詞「夢を叶えた人は どこへゆけばいい/夢の見つからない人は 何を仰げばいい」という箇所は、まさに真剣に悩みながら迷いながら、前へ進もうとする若者へのエールなのだ。
あと、TVアニメ版で全編にわたって流れるショパンの使い方が秀逸!
もちろん、芹澤廣明氏による主題歌・挿入歌も、鼻血が出るほどかっこいい。
だから、原作全巻とTVシリーズDVD-BOXは、何度でも心の青春を謳歌したい人にとっては必須なのです。みなさん、給料はたいて、揃えましょう!!