本書は、インドを代表する財閥であるタタ財閥と、そのグループ企業の実像を明らかにすることが狙いである。タタは1868年の創業以来、インド経済に大きく寄与し、2006年度の売上高はインドの国内総生産(GDP)のおよそ3%を占めている。
創業140年近い老舗財閥でもあるタタは、1990年代初頭に始まる大胆な経営改革、事業ポートフォリオの絶えざる見直し、全社的改善活動などが功を奏し、2002年頃から、売上高、税引き後利益のいずれとも急速に拡大している。2007年10月現在の株式時価総額は、およそ800億ドルにも達している。
その一方で、創業者の遺志が「社訓」として今日でも脈々と受け継がれ、年間160億円相当の資金がインド国内の農村の教育、保健・医療サービス、水資源開発など、貧困者に対する慈善事業へ振り向けられている。今日喧伝されている「企業の社会的責任」(CSR)は、はるか以前から、タタでは実施されてきているのである。
また、腐敗や不正を嫌う企業体質で、厳格な企業倫理、国民経済への貢献、産業発展の先導役など遵守すべき「タタの価値観」(タタ・バリュー)がグループ企業に義務付けられている。
次なるタタの挑戦は、さらなる飛躍を目指した「グローバル企業」への脱皮であり、2000年以降、タタ・スチールによるコーラス買収をはじめ、グループ企業による海外企業買収も本格化している。
本著では、タタの全体像と経営理念を明らかにした上で、事例研究として4つの主要産業(IT産業、鉄鋼、自動車、電力)に注目し、グループ企業4社(TCS、タタ・スチール、タタ・モーターズ、タタ・パワー)を取り上げている。
本書の事例として、この4社を取り上げた理由は、いずれも重要な産業分野に該当する企業であるとともに、タタ全体の中でも売上高の上位を構成する企業であるからにほかならない。また、この4社に焦点を当てることで、インド経済における最近の重要な動きをタイムリーに分析できるというメリットもある。
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