タイの政治経済を40年代から90年代初頭までまとめた本。クーデター実行、憲法制定(改正)、政党結成(集散)、選挙実施、議会政治の開始、安定期、(共産主義の脅威、学生運動の気運、政治家/軍人の汚職などによる)政治危機、そしてまたクーデター、というサイクルを40年代から何度も繰り返している歴史が、具体的かつ分かりやすく紹介されている。57年のクーデターで政権を掌握したサリット元帥による国家設計指針が、その後長い間強い影響力を持っていたという説明には、なるほどと思わされた。また、タイの政治において国王は無視できない存在だが、その国王がどう政治危機回避やクーデターの反対/黙認をしたかが分かるのも有益だった。「タム(social justice)」という社会通念があることも初めて知った。
紆余曲折の政治が続くなか、高い教育を受けた学生や留学生が優秀なテクノクラートになり、より安定した行政、国家開発、外交などが行えるようになっていった歴史的流れも理解しやすかった。本書の最後の部分は、80年代からの経済発展、産業構造の変化、輸出入品の割合変化など、経済発展について。圧倒的な農業依存国家が、どう農業以外の産業を活性化させてきているか、また農業にもビジネス主導のものや村落/仏教に基づいたものなど複数の方法が実施されていることが分かる。