『我らの流儀』では高校サッカー、『アンダーグラウンド』では麻雀と、
ジャンルと出版社を変えて続いてきた、加納英之を主人公とするシリーズの
現時点での最新作です(最終作?)。
前作『アンダーグラウンド』では、退屈な日々を逃れるために高レートの
麻雀にスリルを求める加納に共感することができました。
しかし、この作品の、帯の文句を借りれば「東大3年、司法試験合格、
ヤクザの代打ち」となった加納に感情移入するのは、正直難しかったです。
デキすぎでしょ?
長編「タイル」のメインとなるストーリーでは、凄腕の代打ちとの麻雀勝負が
描かれますが、その勝負も、親友・榊との友情も、どちらも中途半端に
感じてしまいました。
バイト先をクビになるように仕向けたり、榊から彼女を取ったように
誤解させたりと、社会的に追いつめてくる相手に対して、加納は生死を賭けた
麻雀勝負を挑みます。結果として破滅は免れますが、相手を倒すことはできず、
後味の悪い勝利を手に入れることになります。
多分、ありがちな決着を避けたかったのだと思いますが、個人的には、
ありがちでも、爽快感の得られるわかりやすい勝利が見たかったです。
勝負を終えて、加納が放心状態となるラストシーンに、単行本では、誤解の
解けた榊が訪ねてくるシーンが追加されています。それをきっかけに、加納は
勝負の後味の悪さを吹っ切ることができるようになります。
時としてアンダーグラウンドな側に流されそうになる加納を、平凡な榊が
引き止めていることを表すシーンですが、「タイル」での榊は、
彼女を取られたと誤解するシーンしか出てこないので、二人の友情にいまいち
説得力がありませんでした。
辛口の評価となりましたが、今後、成長した加納の、一見クールな中に熱いものを
秘めた弁護士としての活躍も見てみたいと思っています(検事でも裁判官でも
かまいませんが、検事だとまんまドラマの『HERO』になっちゃいそう)。
女子小学生雀士・アキラの命令口調の可愛さに免じて、星四つとします。