私がこの映画で最も心を打たれたのは、最後のシーンです。
最後の最後のシーンで、ジャックとローズがタイタニックで開かれた舞踏会で満場の人に拍手を持って迎えられる映像が映し出されたときには、本当に哀しい気持ちになりました。
本当のタイタニックの舞踏会では、2人のカップルは歓迎されることがなく、多くの人に冷たい態度で扱われた。だからこそ、本当はみんなに満場の拍手をもって受け入れられたかったと何十年も思い続けてきたローズの夢。それがあの画面だと、私は思いました。そしてその夢は、現実には決してかなうことのない夢。それがとても哀しく、そして心に残りました。
その他、ローズを救うために死んでいったジャックの愛の深さには心打たれることでしょう。
ただ、ローズの方はその後、しっかり別の人と結婚していたりして、その辺りが若干「この人って何だろう」と思わせさせられる部分があったりして、その分、感情移入がしにくくなってしまったのですが。まあ、ジャックのためにローズがずっと独身であり続けて、その幸福が奪われてしまうことはジャックとしても本位ではないでしょうから、その意味ではローズの結婚はむしろジャックの意志に沿ったものなのかも知れませんが。
もっともタイタニックの魅力は、この2人をめぐる物語だけに終始するというよりは、その他の点にもあります。
まず、タイタニックの沈没。
これは本当に迫力ありました。徐々に傾いていく船と、なんとか逃げようと走り回る人々。画面を見ているだけで、息苦しくなってきました。窒息死だけは勘弁願いたいと本気で思いました。
それから職業倫理についても、本当に考えさせられました。
逃げ惑う人々を統制するために、銃で人を撃ってしまう乗組員がいましたが、彼は決して自分のためにその人を撃ったわけではありません。撃ったことを苦にして彼自身自殺してしまいましたし。
また、弦楽カルテットの人たちは、逃げ惑いながら死んでいくことよりも、最後まで演奏を続けることを選びました。
こういうのって一体なんなんでしょうね。別にシナリオにけちをつけているわけではなく、本当に考えさせられてしまったのです、職業ってなんだろうって。職業って、食べる糧を稼ぐため以上の何か、命を落としてまで守るべき何かを含んでいるのだろうかと。
それから、こうした死の瀬戸際における人の行動も大変考えさせられるものでした。ローズを助けに行った救助艇は、別にローズを助けに行かなくても責められることはなかったでしょう。助けに行くことで、彼ら自身の生命が危険にさらされるかも知れないのですから。しかし、彼らは生存者を探しに行った。
実際のタイタニック号の沈没では、他人に救助艇での席を譲って、自分は死んでいった人もいたようですし。
そういえば、ワシントンDCで旅客機が着陸に失敗して、冬のポトマック川に墜落したときの映像にも同じような光景が映っていました。ヘリから降ろされたロープ到達した人が、自分がそれを使うことよりも他の消耗していそうな人にそのロープを譲り渡したのです。そして、ヘリが帰ってきて、もう一度その人を救おうとしたときには、その人は冬の凍てつくポトマック川に沈んで亡くなってしまっていたのでした。
少し話はずれてしまいましたが、こういう生死の境においてこそ、人の本当の温かさや冷たさは表れてくるものでしょう。
こうした恋愛部分を含め、そして越えた部分においても考えさせられることのある映画でした。