まずはじめに、この本の購入をお考えになられているのであれば、2点注意すべきだと思います:
(1)この本は「教育マニュアル」ではなく、著者Amy Chua自身、自分の教育方法が「絶対的に正しい」とか、「この本に書かれている通りにすれば子供も成功する」とは確約していない(中国の教育方法を大絶賛はしているが)。
(2)書き方は平易で、母親と娘の葛藤が生々しく伝わってくる。
つまり、この本は教育論として書かれているのではなく、アカデミックでもなく、マニュアルでもない。一人の母親の、二人の娘の子育て日記である。
その内容は、教育熱心な日本人でもびっくりするほどである(娘に毎日6時間のピアノやバイオリンの練習を課したり、いかなる文句も聞き入れず、3歳の娘を反省させるために娘を家の外に放り出し、コネチカット州の寒い冬を耐えさせたり、次女を容赦なく「ゴミ」と罵声したりなど)。
これだけを読むと、「なんてひどい母親なんだ」と思うかもしれない。しかし、本人曰く、全ては娘のためであり、事実、二人の娘はカーネギーホールをはじめとし、多くのコンクールやリサイタルで賞状を受賞している。長女Sophieはハーバードとイェール大学に合格し、ハーバード大学へと進学。
つまり、「厳しさ」と「優秀な子供」を天秤にかけた時、著者はとことん厳しく、とことん優秀な娘を育てるべきだという教育理念から娘を育てたわけである。厳しい教育の徹底ぶりは、この本を読めば一目瞭然だろう。
さて、評価は3つ星にしたが、まず評価できる点としては、娘との間で生じた軋轢を赤裸裸に語っていること、またよくも悪くも著者の考え方(正しいか正しくないかは別として)が伝わってくることがある。
−1星:娘と夫Jed Rubenfeldの視点が1人称で含まれていないこと。全て著者(=母親)の視点からナレーションされており、夫や二人の娘が感じていたことが著者の言う通りだったのかは疑問(察するに、娘の気持ちの解釈は間違っているところも多いと思う)。
−1星:著者は学部はハーバード大学経済学部卒業、そして大学院でイェール大学でJuris Doctorを取得しているが、中国とアメリカの文化の相違の認識があまりにも雑であり、根拠がない(平気で「教育が間違っているからアメリカ人の子供は太る。一方で中国は3000年間みんな痩せている」、「ドラムをたたく子供はドラッグへとはしる」などその他問題発言多数)。Amy Chua自身、恥ずかしいステレオタイプにはまっており、娘に求めている「教養がある人間」とは言えない部分もある。
総評:読んでみる価値はあると思うが、Amy Chuaの教育理念を額面通りに踏襲することだけは避けるべき。