マキューアンの新作。読みやすい。妻の浮気を巡って事件が起こり、主人公は否応なしに巻き込まれるが、普通の人間のような倫理観、道徳心を全く欠いているので、後先も考えず、非常識で無責任な態度を取ってしまう。女性関係も、生活態度もだらしがないの一言。とはいえ、世の中の男性は、似たようなところが全くないとは言えないだろう。
問題は、こうした駄目男なのに、頭だけは図抜けて良く、女日照りもなく、名誉、金銭面では次から次へと幸運に恵まれ、恐ろしく順調な人生を送ってしまっているということ。小説の最後では、彼はそのつけを払う羽目にはなるのだが、それほど大したつけではないのかもしれない。
男の理想としての、世俗的成功と、倫理観の全く欠如した欲望だけの生活という、二つを手に入れた男の話だけれど、こうした主人公に感情移入している自分が怖い(評者は男性です)。もし主人公と同じチャンスが君にもあったら、どうするだろう?そんな才能も、機会も無いから、心配は全く無用なんだけれどね。