私はこれまでにソーシャルメディアについての書籍を10数冊読んだが、本書ほど刺激に満ちていて目の前の課題に有力なヒントを与えてくれそうなのはなかった。著者の12年に及ぶ思索と体験を基に実践的なソーシャルメディアの活用法がのべられているからである。
巻頭に70ページを費やしてインターネットの歴史を振り返る。この素晴らしいインターネットという道具をいかにしてマーケティングに結び付けるか、が著者の出発点なのである。本書には、マクルーハン、ハンナ・アーレント、宮台真司などの内外の社会学者、政治学者の名前がふんだんに出てくるが、社会学やコミュニケーションや情報論を深く理解してインターネットを生かそうとする著者の真摯な姿勢の反映であり、その広い視野と深い洞察が本書に説得力を与えている。
ソーシャルメディアを考えるにあたり、「拠りどころ」軸(価値観と現実生活)、「目的」軸(情報交換と関係構築)の2軸を設定し、4つの象限にソーシャルメディアを整理しているのは理解しやすい。4つの象限の中で価値観と関係構築でつくられる象限がもっとも企業にとってマーケティング上有効であるとして、その具体化である収益を生む企業コミュニティの運営法を詳しく解説している。
独自の研究と300社の実績から得られた成果と言うだけあって、記述が具体的で説得力がある。ソーシャルメディアをマーケティングに活用する上での重要なポイントが詳細に述べられている。たとえば、閲覧者の20%しか投稿しない、1人のサポーター(積極的な投稿者)は1000人につながっている、実名だと本音を出しにくい、などである。本書はソーシャルメディアをマーケティングにどう活用するかをかなり高い見地から述べているが、裏付けのある詳細な記述によって実践的なハウツウ書にもなっている。
著者の創業時からのエピソードが随所に挟みこまれている。ゴキブリの出るボロアパートで開発したこと、みたらし団子1本で2食を賄ったこと、忘年会の席に飛び込んできたビッグニュース。消費者金融に助けてもらったこと、等々。ひとつのベンチャー企業の苦難の足跡と著者の志の高さを読者は知ることになる。
ソーシャルメディアに関心ある人、携わる人にとって見逃せない1冊だと思う。