私が知らないだけで、他書やネットには多数掲載されているのかも知れませんが、本書には、あまり他で見たことのないグラフが多く、参考になりました。例えば各国地下経済割合比較グラフとか(伊希が各25%なのは予想通りでしたが、日本も10%あるとか)、各国の1800年以降のデフォルト期間比率グラフとか(なんとギリシアは独立後170年のうち50%がデフォルト期間とのこと)。中でも大きな印象を残したのが、「国内非金融部門の純金融資産と一般政府の純金融債務」と「家計金融資産残高を政府債務がいつ上回るか」を予測したグラフ。よく政府債務は1000兆円でGDPの200%だが、資産を引いた純債務は500兆円であり、110%程度、家計資産も1500兆円あるし、国債の95%は国内で買っているから大丈夫、という意見を聞きます。しかし、ここ数年の貯蓄率率低下を勘案し、このままではいつ頃、家計資産を食い潰すのか、というデータは見た記憶がありません(この点未読ですが、「
貯蓄率ゼロ経済―円安・インフレ・高金利時代がやってくる (日経ビジネス人文庫)」とい本があるようです)。
本書p209のグラフは、1997年から2009年までの「国内非金融部門の純金融資産と一般政府の純金融債務の推移」で、1997年に純金融資産と政府の純金融債務の比率は300%近くあったのに、2009年には150%にまで減少している状況を示しています。このペースがもし続けば、13年後の2022年には、国内資産が食い潰されてしまうことになります。もちろん266兆円の対外資産は残っていますし、経常黒字が続けば、もう少し先まで食い潰しを延ばせるかも知れません。そう思ってp229のグラフを見ると、海外資産の利子の所得収支黒字は2025年まで横這いであるものの、貿易収支黒字は2017年頃をピークに年々低下、グラフには2025年までしか出ていませんが、グラフから予想するに、この減少ペースが続けば、2040年頃には貿易黒字はゼロになり、その後は海外資産取り崩しモードに入ることに。
更に、p227では、家計金融資産残高1500兆円を政府債務がいつ上回るかを予測したグラフがあり、早くても遅くても2020年代のどこかで国債残高が家計金融資産を上回る予測となっています(参考:この次に読んだ「
日本のソブリンリスク―国債デフォルトリスクと投資戦略」では、家計金融資産の内訳と1970年からの分析をしており、それによると、家計金融資産は1990年代末までで累積過程は終了していて、今後の伸びは期待できない、となっています)。
政府債務残高が800兆、900兆、1024兆、国民一人当たりX百万円と毎年の如くメディアに踊り、一方で、「国債購入者には海外投資家は少ないからデフォルトは無い。ギリシアとは違う」「家計金融資産があるから大丈夫。財務省に煽られるな」「紙幣を増刷してインフレにすれば問題ない」という論者が現れ、実態はどうなのか?と常々疑問に思っていたので、欧州金融危機解説本として手をとった本書にズバリのグラフが掲載されており、更にアマゾンが関連書籍として紹介していた「日本のソブリンリスク」でより詳細な分析を知ることができ、有用でした。
本書だけだと、色々なグラフがあって参考になるけど、少し駆け足で浅いかな、という印象もあるのですが、近年の欧州危機にのマクロ指標に基づく分析・解説ついては、「
欧州激震」が本書を補完しますし、「日本のソブリンリスク」は、日本についての分析・解説を補完するように思え、この三冊組で私にとって有用な書籍となりました。