「上野ががんばったから」
「10回やって1・2回勝てるかどうかのアメリカに、運良く勝てた」
ソフトボール日本代表が北京で金メダルを獲れた理由を考えても、浮かんだのはそのくらいのことだった。それが、違った。全然違った。こいつらすごいなぁ。選手も、ベンチも、スタッフも、スタンドにいたもう一人の選手も、何本もの矢がキュイーンと音を立てながら一斉に世界一に向かって飛んでいった。だから、勝てた。これは必然でしょう。
選手個々が金メダリストたりえた理由やエピソードの数々は、笑えるし、泣けるし。北京でのワンプレー、ワンプレーが持つ意味にはいちいちうならされるし。選手が個性を殺さずに、有機的に絡み合って本当の「チーム」になっていくのって、いいなぁ。五輪に限らず、サッカーを筆頭とするいろんな団体競技が世界で勝てなくて、「空中分解」とか言われて見る側もモヤモヤがたまってしょうがなかった。それが一気に晴れた。やればできるじゃん、日本人も。
ソフトのチームづくりの妙を、サッカーも野球もバスケもハンドもホッケーも、すべての競技団体は参考にしてほしい。ソフトの選手一人ひとりの個性の生かし方や取り組み方を、日本代表クラスも学生も高校生も中学生も、すべての世代のアスリートは学んでほしい。そう思ってしまうくらい、世界一になるべくしてなったチームの物語は示唆に富みまくっている。
この本がフォーカスしているのは上野だけではない。出場全選手や監督・関係者の話をまとめ、誰かの人間ドラマに偏ることなく、文体も描写も比喩も美しく、「スポーツノンフィクション」の枠で語るのがはばかられるくらいいい仕上がり。今後あらゆる競技における「チーム論」のバイブルとして読み継がれていくんだろうなあ。