ソフトウエアエンジニアリングにおける標準化の重要性は強調してもしすぎることはないのですが、開発の現場においては「独創性という名の思いつき」や、「高度なテクニックに名を借りた独りよがり」が横行する結果になります。当の本人に「それはちょっと標準からはずれているのでは?」という質問でもしようものなら、標準とはなにかについて延々と議論が続きます。
スティーブ マコネルの名著、「コード・コンプリート」ではそのような態度全般を「宗教的確信」を呼んでいます。
チームを組んでソフトウェアの開発を行う場合、チーム・リーダーは知識の共有と標準化に注意を払う必要があるのですが、本書はそのような場合の有益な知識の見取り図を提供してくれています。
本書の構成はシステムライフサイクルに準じています。ある程度実装作業に習熟してきたプログラマーは、上流工程に当たるシステム設計における要求工学(requirement engineering)等の文献にも、自然と目が向くようになっています。実装作業より上流工程の知識を身につけたいと願っている中堅プログラマーは本書を読んで、自分の使っている知識がシステムライフサイクルのどの位置にあるのか確認するためにも使えます。
ただし、文献については「一切邦訳名がついていない」ので、非常に便利とはいえないのですが、インターネットがこれだけ発展した現代では、さほどの不自由は感じません(ただし英語の文献を読む必要もあるため、本人の努力は必要であることは注意が必要です)。
本書を利用して、ソフトウェア開発の現場で知識の標準化と健全なキャリア形成が進めばと感じています。