(日経コンピュータ 2004/11/15 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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なんと言ってもタイトルが悪い。「ソフトウェアの匠」という語から連想するのは、ずばり「ハッカー」だろう。オープンソースや特許の話から「匠」というイメージは抱けない。キーボードの話は「ハードウェアの匠」ではないか。
それから紙質。こんなに厚くて質の悪い紙を使ったら、厚くてめくりづらい本ができるのはあたりまえじゃないか。ページを繰るたびにげんなりするようじゃ、どんなに内容がよくてもダメだよ。アスキーの256倍シリーズより安っぽいのにこの値段は高すぎる。
中ほどでシステムやらアーキテクチャを語っている二人は、巻末で対談もしているが、書いてることと言ってることが違うと思った。対談では「土俵を変えて勝負しないと」とか言っていながら、書いてることは現在の主要技術の全面肯定もいいところで、これじゃ「普通のやつらの上を行」くのは無理だよな。BIOS、キーボード、検索の話は面白かったし、特許の話も知らないことがかなりあった。ほら、内容は(少なくとも半分くらいは)良いのだが。
まつもと氏のプログラミング言語論、高林氏の検索技術論、津留氏のBIOS開発論、八幡氏のキーボード論(ソフトウェアじゃないが)は、論文というよりも技術エッセイであり、大変読みやすく、またおもしろい。
中でも、オブジェクト指向の草分け、羽生田栄一氏の4本の論文は出色。ソフトウェアの概念化は古くて新しいテーマだが、これを、オブジェクト、デザインパタン、開発プロセス、ビジネスモデリングの4つの観点にわけ、その最新の知見を論じている。
オブジェクト指向論に著しい特徴は、いわゆるソフトウェア工学の範疇を完全に超えて、言語学はもちろんのこと、認知心理学、社会学、民族学の領域にまで足を踏み入れている点である。ソフトウェア、特にシステムは人間や社会と離れて存在しない得ないものであるから、人間や社会に関するこれら文系の学問、知識との接点がきちんと語られるようになったことは、むしろ当然の帰結といえるだろう。とはいえ、このスタンスでソフトウェアを論じることができる人はまだまだ少ない。羽生田氏には今後もがんばってほしいと思う。
ソフトウェア技術を網羅的に総覧するというより、
それぞれの著者が得意の分野のお話をする、という感じで、
内容的にも、初心者向け解説というより、
とりあえず導入部分を紹介しておくから、後は自分で調べてね、
という感じなので、ちょっと、読む人を選びそうな気がします。
個人的には、キーボードのお話や、特許のお話など、
ソフトウェアの本には、あまり見かけないものが含まれていた点と、
オブジェクト指向をめぐる技術動向が読めた点で、
良かったと思っています。
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