これまでの同作者の作品2作とは毛色が違った作品でした。
いや、根本的な部分、つまり受が翻弄されるというポイントは同じなのですが、攻側の態度やスタンスに愛があるという点が違いました。
大学で詩のゼミを通じて仁科は少し年上の広尾と知り合い、広尾のペースに巻きこまれた形で付き合うようになり、いつしか生活が広尾で一色になってしまい、その生で広尾から遠ざけられるようになってしまう。
己を持ち、したいこと、希望などが貪欲に分かっている広尾と、詩を書くこと以外はてんでダメで、広尾が好きすぎて詩を書くことさえできなくなってしまう、弱い性格の仁科。
広尾は欠点だらけで後ろ向きな仁科の性格も、彼の書く詩も愛しくて、だからこそ詩を放棄した仁科をつっぱねてしまう。
そこには愛があり、広尾がどうしてそうなったのか、自分は何をすべきなのかを仁科が蛇行しながらも理解して、前へ進もうとする。
欠点だらけの人間をなにもかもひっくるめて好きという想いと、誰かを好きすぎて自分がどうしていいのかわからなくなってしまう想いが、前半の表題作、および後半の後日話で丁寧に描かれていたと思います。
ちょっと最初、微妙なとっつきにくさ……というか二人の性格を理解するまでの読者側の努力が必要な本だと思いましたが、なかなか面白い作品でした。
好きなのに、ただ甘いだけじゃなく、現実を観るという切り口もよかったです。