私は昨年までソニーに勤務していました。本書を読むことで自分の入社時から退職時まで、トップマネジメントに何が起こっていたのかを生々しく実感することができました。私自身が感じていたソニー凋落の原因はいくつかありますが、いずれも出井さんに由来する施策が原因でした。出井さんは歴代の経営者のなかでも一番現場に出てこなかった人でした。設計・開発・製造・営業の各現場でなにが起こっているのかに無関心だったと思います。また自らの責任を棚上げにしてリストラを実行したのですが、製造と営業現場を重点的に人員削減の対象にしました。これにより店頭にソニー製品の露出がすくなくなったり、品質問題が噴出するようになりました。更に出井さんは人事や組織変更を異様に頻繁に行いました。不振部門ほどいじくられるので、組織の長が更迭されるたびに方針がかわり、その度にゼロリセットです。テレビやHDDレコーダーが出遅れたのはこのせいです。最後に、技術に疎いので技術戦略の意思決定ができなかったのが最大の問題です。液晶テレビについて「ぼくは(テレビ部門に)やれやれと言ってるんだけど、あいつらやらないんだよなあ・・・」と言っているのを聞いたことがあります。戦略的リスクを本社が負わないとできないだろうな、と思った記憶があります。
こういった出井時代の問題点を、外部にいながらあたかも内部で取材したかのような緻密な取材をしているのが本書です。
ストリンガーに関する記述がもっと多ければ星5つだと思います。