オリジナルは2007年リリース。原題は『サムスンの人材経営』と訳されるべきで、韓国で10万部売っている。この種の本としては『バイブル』扱いらしい。邦訳は2010年8月31日リリース。筆者申元東氏は18年間サムスンに勤務し、人事部長だった人物である。ご存じの方も多いと思うが念のため書き添えるとサムスン電子は2004年に純利益でマイクロソフト、インテルを抜き、純利益で世界一となった会社である。直近2010年7月7日に発表された4-6月期の連結営業利益は約3,700億。2009年の売上高約11兆円。営業利益8,000億円でこの額は日本の電機大手8社の合計より2,000億円以上多く、束になってもかなわない状況だ。
かくもすごいサムスンの凄さの理由が明かされるのではと手に取ったが、結論から言うと明かされていなかった。ここにでてくるほとんどの人事マネジメントは『松下幸之助』の教えとほぼイコールである。それをサムスン流にアレンジしたものに過ぎず、『松下マン』を『サムスンマン』に書き直しているに過ぎないようだ。ただ、人事プログラム(BLCと言うらしい)をスタートしているのが韓国が危機に陥った1997年前後だと言うのが興味深かった。このプログラムは今では5段階まで進化している。この時期スタートというのも、その後の『IMF不況』から考えるに、偶然ではないと思える。
読了した感想ではサムスンの凄さの原因は人事ではないと思った。むしろ、世界と勝負できる技術への圧倒的な投資が原因ではないか、と思えた。そしてその背景には必ず政府の圧倒的な後押しがあったろうとぼくは感じた。今の日本政府にそれがあるか?そこが問題だろう。日本の企業が円高で辟易して空洞化を怖れている時点でもう負けている、と思った。