岸田衿子氏の詩と、安野光雅氏の絵とが融和した、詩集のような絵本のような美しい一冊。
詩人、童話作家であり、『のばらの村のものがたり』や『かえでがおか農場のいちねん』など絵本の翻訳でも知られる岸田衿子さんの短詩は、平易な言葉でありながら深く、美しく、心の奥底に響いてきます。
安野光雅氏の絵は、幻想的で、音楽的で、なんとも不思議な味わい。おそらくは古めかしさを演出するために、黄ばんだ紙に描かれた絵は、砂漠に埋もれた岩壁に、古のひとびとが遺した壁画のよう。
そして紙の向こうにはうっすらと、楽譜が透けて見えるのです。
どこか遠くから聞こえる、かすかな旋律のように。
装幀もとても凝っていて、テキストはまっすぐに並んでいるだけではなく、ぐにゃりと曲がっていたり、逆さまになっていたり、絵の外に転がり出ていたりするのです。
この本の中に入ってゆくと、時を刻む砂に埋もれた遠い日々が、慕わしく甦ります。