オリジナルは2008年リリース。邦訳は2009年10月30日リリース。リンカーン・ライム・シリーズの第8作。毎年10月の最終週というのは、池田真紀子氏の名訳でジェフリー・ディーヴァーの新作がリリースされる。毎年楽しみで仕方がない。
本作は彼には非常に珍しく直球勝負の作品だ。つまり、ほとんどどんでん返しがない。極悪な犯人とストレートに勝負する。うーん、ほんとに珍しい。いつものリンカーン・ライムと違って、独特の表現が出てくる。それをフツーの英語の言い回しと、比較してたりして面白い。
しかし若干辛口で言わせてもらえば、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』を読んだ後では、ネットの世界の描き方がやはり知識不足は否めないと思う。例えば画面をコピーできなければデジカメで撮る、というやり方この手の犯人は絶対にしない。もっとカンタンでいい方法があるじゃないか、と思う。
そしてあとがきが非常に興味深かった。ジェフリー・ディーヴァーは創作に当たって、リンカーン・ライムのホワイト・ボードみたいなやり方で本を書いているらしいのだ。一室を埋め尽くすかのように並んだホワイト・ボードに、章ごと、シーンごとの登場人物やエピソード、会話の運びなどをことこまかに書き込んだ紙が、テープでびっしり貼られている。ディーヴァーはこの作業に何ヶ月もかけるらしい。で、それを落とし込む原稿書きはだいたい1〜2ヶ月だけ。実におもしろい創作方法だ。捜査で犯人を分析する手法と小説を書き上げる手法は同じ、ということだ。実に興味深い。