何とも味わい深い本が上梓されたものだ。
乙川(知野)弘文との関わりの中で、Jobsのもう一つの側面に光が当てられた。
p24から、1997年夏に、Appleのメンバーに製品の絞り込みについて、説明するエピソードが出てくる。
緊迫したやり取り、空気感まで描写したこのシーンには弘文は出てこない。
しかしこれはまさしく禅である。
JobsがAppleをどのように立て直したか、その時どのように禅が関わったか、または関われ切れなかったか、答があるようでない状態で、あちこちと摘み食いをするかのように話は進んでいく。
最後まで読み終わって、この本自体が禅の公案だったなと気づくのである。
独特の絵柄やコマの進め方から、松本大洋を私は思い出した。
繰り返し読むと、その都度見えてくるものは変わることだろう。