本文にしておよそ200ページというコンパクトな本ではあるが、中身は決して薄くない。名目金利がゼロ(これは現実的にとりうる下限の値)に近い状況で日銀が何をできたか、そして何をしてきたかというテーマに沿って、日本経済そして日銀の金融政策を振り返り、学界における政策提言と実際に採られた政策の比較、そして政策効果の実証分析までもカバーしている。その意味で、本書はそのタイトル通り「(日銀と)ゼロ金利との闘い」についての良いまとめとなっている。
残念なのは、回顧録的な要素が無いところである。就任当時のボードで唯一の学界から就任した審議委員として、委員会における「闘い」もあっただろうと推測される。その最たる例であろう、2000年におけるゼロ金利解除‐植田・中原伸之審議委員(当時)のみが反対したと考えられている‐は、本書においてはさらりと解除の事実が述べられるだけである。おそらく守秘義務の制約もあるのだろうが、「(著者と)ゼロ金利との闘い」についても読んでみたかった。
同じテーマについての、ジャーナリストによる傑作として、藤井良広「縛られた金融政策」がある。こちらも是非読まれたい。