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6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
女の業 (ネタバレあり),
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レビュー対象商品: ゼロの焦点 カッパ・ノベルス創刊50周年特別版 (新書)
社会派ミステリーの巨人、松本清張の名作ということで、中学時代、大学時代と読んでみて、あまりピンとこなかったのだが、不惑を迎えて読み返し、これはもの凄い小説だと思った。ここに描かれているのは女の業である。「君の体は若くて綺麗だ」と新婚旅行で一緒に入った風呂のなかで言われたひと言で、夫の後ろにいる別の女の存在に勘付いた新妻。その新妻が、夫の失踪後、冬の北陸でひたすら追い続けたものは、まさにこの別の女の影なのだ。恐らく禎子にとって、夫の真の正体とか失踪後の行方などは二の次だったに違いない。彼女にとって夫は、まだ確固とした愛情の対象とはなってなかったはずだから。だから、禎子の執着は、夫が隠していた別の女の姿が見たいというその一念にあったはずなのだが、彼女自身がそのことにまったく気がついていないというのが、まさに清張の凄さだと思った。その別の女の姿を暗示するのが、二軒の家の写真なのだが、禎子はどうして自分がその写真に執着するのかわかっていない。それこそが清張の描く女の業なのである。業ゆえに罪を犯す女と、業ゆえにその犯人を追いつめる女。冬の北陸の地の風景描写が、その女達の業の姿を見事に浮き立たせているのに舌を巻かざるを得ない。これはまさに大人のための小説であり、読み終えて、参りましたと無条件降伏せざるを得なかった。 清張の数ある傑作のなかにあって、名作の名に恥じない作品である。
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5つ星のうち 5.0
新潮文庫より200円安い。,
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レビュー対象商品: ゼロの焦点 カッパ・ノベルス創刊50周年特別版 (新書)
東宝のリメイク映画を機に、松竹の旧作映画のDVDBOOK(小学館)も出て、新旧2作を見ているうちに、昔読んだ原作を読みたくなり、再読。 十数年前は、活字が小さかった頃の新潮文庫で読んだ。 今回、こちらを選んだのは連載初出時の光文社(月刊「宝石」1958〜60年)に 敬意を払ってというよりも、廉価、ということに尽きます。 やはり、面白い。 映画は、モノクロ画面を逆手にとったような「風景」と、主人公の「心理」、 その両者の交感を見事に描ききった旧作に軍配が上がると信ずるが、 原作は、さらにそれをしのぐと、改めて思った。 清張の(特に初期の長編)小説は、アイデアの上手さと社会的背景の投影のバランスが 絶妙である反面、今読むとその「社会的背景」が反作用を起こしてしまう場合もあって、 古臭く感じる作品もないではない(『眼の壁』『影の地帯』『球形の荒野』あたり)。 ところが、この小説は、物語のエンジンともいうべき主人公の視点と心理が、 新婚早々夫が失踪した若く美しい妻、という時代を超えて魅力ある設定であるため、 昭和30年代の時代相、地域性、社会規範、価値観…等々が、古臭いというよりも、 一種のノスタルジーとして(も)、読ませられてしまう。 掲載誌「宝石」の読者を意識してのことかどうか分からないが、前半部で描かれる、 「若く美しい新妻」への夫の視線(これは伏線でもある)や、夫失踪後の、 夫の若き同僚からの視線、それらに対する妻として、女としての心理など、 昭和30年代の女性像として、或る意味新鮮でもあり、現代でも充分、興味をつなぐ。 何よりも、見合い→結婚→新婚旅行→出張への送別まで、「妻」を意識していく過程が 緩慢だった主人公が、失踪後、夫の「過去」を知らなかったことにショックを覚え、 むしろ、そのショックの大きさゆえに、一気に、「妻」であることを意識してゆく、 という描き方が、読み物として抜群に上手い。 この主人公の造型あるがゆえに、過去に1度読んで謎解きミステリの愉しみがない者にも、 再読の愉しみを与えてくれる。 加害者と被害者に別れた「負の過去を持つ女たち」の「過去」が風化させられても、 彼女たちと、主人公である「妻」の造型に清張が籠めた「女」の視点の恐るべき怜悧さと、 悲しいまでの強靱さは、今後とも、風化することはないだろう。
5つ星のうち 4.0
清張には珍しく女性向き,
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レビュー対象商品: ゼロの焦点 カッパ・ノベルス創刊50周年特別版 (新書)
時代背景は昭和33年冬で、舞台は北陸だ。その13年後の昭和46年夏に、北陸のミニ周遊券1枚を持って友人2〜3人と貧乏旅行にでた。本書は羽咋という駅がポイントだが、昭和46年夏の夜遅くに着いた時、その列車が最終で、駅はすでに無人駅だった。荒涼感が辺りを包んでいて、夏にも関わらずうそ寒かった。北陸の陰鬱感を実感した。従って昭和33年冬は、もっと寂寥感があっただろう。 さて、本書はワンコイン(500円)で買える。ノベルスで500円は安い。 本書は何回か読んでいるし、昭和30年代に映画化されたものは観たし、あるいはテレビドラマ化(通算4回)されたものも全てではないが観ている。 その昭和30年代に映画化されたのを少し述べると、監督は野村芳太郎で清張もの映画の常連監督と云ってもよい。ヒロインは久我美子で社長夫人が高千穂ひづる、受付事務員が有馬稲子で、平成に映画化された女優になおすと、広末涼子、中谷美紀、木村多江となる。 調べてみると、昭和36年3月に公開されており、さすがにリアルタイムで鑑賞は出来なかった。後年、テレビの深夜映画で観た記憶があるが、当時の時代の様相が活写されていて、風景も当り前であるがリアル感があった。 現在の映画やテレビで、昭和30年代を時代背景にしたものがチラホラ(三丁目の夕日・点と線等)見かけるが、小奇麗に纏まっていて、埃や臭いや、リアルな貧しさが実感として伝わっていないもどかしさがある。 何といっても50年前と云うのは、はるか彼方の事だなと感慨にふけるのである。 話しが逸れた。本書もそういった意味では時代を感じさせる言葉遣いがある。距離を表わすのに、一里とか二里と使用しているし、携帯電話どころか固定電話も各家庭にはない様は何故か懐かしく思えた。 清張はもともと読み易いが、本書は若い女性の視点で展開していくので、尚更読み易く、謎の連鎖が自然で、知らない間にのめり込んでしまう。
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