サブプライム問題、金融危機、そしてアメリカの自動車産業の苦境などフィクションではなく、
現実の世界を反映させたテーマ故、とてもリアリティがある。
物語は日本自動社工業(通称、日工)が社運を賭けて発表するハイブリットカーを発表するにあたり
いかにして市場にインパクトを与えるか?というところから幕が上がる。
電気自動車や水素自動車ではない、もっと現実的なエコカーとはー。
主人公は同社北米営業戦略室出身の栗林絵里香。そう女性である。
斬新な企画でもって彼女が描く日工の未来に社長の牧瀬亮三は舌をまく。
どろっとするような余計な人間関係を(あえて?)排除して、環境問題に対して自動車メーカーは
何ができるか、ということにフォーカスしているため余分な贅肉がなくとても読みやすい。
環境問題について理解が深まるフレーズがたくさん出てくる所もよい。
自動車メーカーのこれからのキーワードは言わずもがな「エコ」である。
楡作品特有のビジネスモデルのアイデア、それらを実現するために奮闘する登場人物描写は本作でも健在。
楡氏レベルでは中の中と言ったところか。
前作「骨の記憶」はありつつも、近年は専ら経済小説が多い楡氏であるが、
そろそろハードボイルド、サスペンス、ミステリーを発表してもらいたいと願っているのは
僕だけではないはず。