稲見一良、風間一輝は、日本の誇る素晴らしいハードボイルド作家でありながら、一般にはそれほど知られることなく世を去っている。
特に『ダックコール』で山本周五郎賞を獲った稲見氏の本を読むと、「こういうハードボイルドもあるんだ」と目からウロコが落ちる。
何しろ、稲見氏自身が山本周五郎の「樅の木は残った」をハードボイルド作品として敬愛していると語っていたぐらい。
カッコつけて背伸びするやせ我慢だけのハードボイルドではなく、まさに<大人の>ハードボイルドを描ける作家だったのだ。
これは犬や野鳥を愛し、自然と戯れ、だけど背筋をぴんと張って何かに耳を澄ます。そんな大人の男たちがたくさん出てくる短編集である。特に表題作に出てくる<猟犬探偵>竜門は実に魅力的。
せっかく復刊されたんだから、ハードボイルドファンなら読まないと損をすると思う。