自分は既に40歳を越えているので、冷静に考えてみればほとんどあり得ないようなこの物語を大人のファンタジーとして読んだのだが、例えば20歳前後の人はどう感じるのだろう。もしかしたら地味なだけの作品なのかもしれない。
原作は未読なのだが、一巻を読んで次のような感想をレビューとして投稿していた。
・この小説を原作とすることを谷口ジロー自身が思いついたのか、編集集者が提案したのかはわからない。そして、わたしは原作を未読なので彼が原作をどの程度忠実に再現したのかどうかはわからない。
・ただ、彼が「ほとんど小説のままに、センセイとツキコさんといっしょに歩いてみよう。そう思った。」という文章を寄せているので、きっと、原作の世界を忠実に再現しようとしたのだろうと思う
・でも、出来上がったのは(まだ完結していないが)はやっぱり谷口ジローの世界だなぁと思わせるものだった。ツキコとセンセイの距離感、漂う空気は谷口ジローの作品そのものだった。
この2巻に収録されている川上弘美と谷口ジローの対談を読むと、彼がツキコとセンセイの距離感を意識して作画していたという趣旨の発言があった。なんだか嬉しくなってしまうとともに、読者に「絵」で人間同士の心理的な距離感を感じさせてしまう谷口ジローの凄さを改めて感じてしまった。
そして、巻末の対談を読んで興味深かったことがもう一点あった。
谷口ジローが、「(昔描いていた)ハードボイルドよりも今の静かな日常を描くほうが腕力が要る」と発言していることだ。
彼の作風が現在の静謐なものとなってから長い時間が流れている。絵柄も変化している。そんな彼が初期の作品の続編を描こうとする気持ちはないように感じていたのだが、それは彼自身の年齢による心境の変化だけが理由で、彼がいう「腕力」という視点は思いも拠らなかった。「日常を描くほうが腕力がいる」。もの凄く深い言葉のような気がしてならない。