断崖絶壁で体を張って生きるすさまじい気迫を見せつけて圧倒的だった前作『リヴ・スルー・ジス』。発表時期にコートニーの夫、カート・コバーンの死が重なり、作品にいっそうの衝撃とドラマ性を加えたのも事実だ。あれから4年。コートニーは女優になり、モデルになり、サテンのロングドレスが似合う業界の名士となって一時は音楽への意欲をすっかり失ったとさえ噂されていた。真偽のほどは定かでないが、そんな彼女にハッパをかけたのが昔の恋人であるスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンだったらしい。現に5曲を共作している。
ぐっと美貌に磨きがかかった(整形したって説もあるが)彼女だが、野太い声のぶっきらぼうな歌い方は相変わらず。L7とか女ハード・ロック・バンドになりかねない歌を、驚くほどキャッチーなメロディと誰にでもアピールしそうなポップ性が、世界でもっとも有名な女性にふさわしい、輝かしく華やかなものに変えている。前作の生命の叫びの切実さには及びもつかないが、これもまた当時の彼女の現実なのだから仕方ない。ホールがこんなに聴いて楽しい、音楽的にすぐれた作品を作るまでに成長するとは思いめしなかった。
で、はたしてコートニーはハイソな女になったのか。否。倣慢で猛々しい本性を取り繕うことなくムキ出しにして、とことん本音をぶちまけている。聴き手の首を両手で締め上げて耳を傾けさせるような、その声、その言葉。それはなお波乱の人生を生きる荒々しい思いを語ってドラマチックに響く。これがメーク・ドラマの才能ゆえだとしても、彼女は主演スターを見事に演じきっている。