『携帯電話によって人間がゾンビになってしまう話』
なんてことを聞くと、どうしても年末年始に新宿や渋谷で「終末の日は近い」とか「悪の電磁波から身を守るためにはイエスの教えを守ろう」とかいう看板を持って街頭に立っていた怪しげな人たちを思い出してしまう。
そんな与太話を信じるのは学研ムーの熱心な読者である僕か、それに類する陰謀が大好きなパラノイアに取憑かれた一部の人たちだけである。
だがそんな脳味噌がいい感じに沸騰した人たちの話も、あら不思議!キングの手に掛かれば一級のホラー小説に!
スティーヴン・キング教の信者にして、世界が崩壊する小説が三度の飯より好きな僕にとって
1、キングの小説であること
2、世界崩壊を描いたものであること
という二つの条件がそろっただけで、それはポーカーでいうロイヤルストレートフラッシュであり、麻雀でいう国士無双であることは疑いようもないのである。
それに加えてゾンビ!まぁゾンビというよりも、ダニー・ボイル監督の映画『28日後』のそれに近いかもしれない。だがそんな些細なことはどうでもいい。
キング!ゾンビ!世界崩壊!
そんな小説が翻訳され出版されると聞いた瞬間、僕がメスの周りを走り回っただけでイッてしまうオスウサギのように身悶えたことは言うまでもないだろう。
何よりこの本はキング作品の中でもかなり読みやすい部類に入る。もし僕がキング教の宣教師だったなら、今まではキングの小説を初めて読む人には『ミザリー』『霧(スケルトンクルー収録)』『ファイアースターター』『呪われた町』あたりを勧めていたであろう。
だがいまは違う。いまなら、各家庭をまわってインターホンごしにこう言うだろう。
「携帯電話によって人間がゾンビになってしまう話に興味はありませんか?」と。