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セリーヌの作品はフランス文学において大胆な口語表現の小説への導入が文体的に問題にされ正直言って初学者程度のフランス語能力の僕などには原書の過激さははとうてい理解不能なレヴェルにあるのだが、翻訳で水に薄めたような文章を読んでいると主題は「口語」なのではなくむしろ「書き言葉」というよりも《書くこと》そのものの痙攣的な営為にあると思える。貧民街で医師をする話者が執筆する『英雄伝』を同僚などに語りつつ、少年期を読者に語る入れ子構造(話者の名は作者と同じ「フェルディナン」という名前を持つ)を、しかしセリーヌはひたすら直線的に書いていく。それは、ボルヘスがもっとも複雑な迷宮とは直線であると言ったように、その直線性によってモニュメントとしての文学作品といった言葉思い起こさせさえするものだ。
呪詛と憤怒に彩られたセリーヌの作品は、しかし意外なまでに清浄な生の謳歌も感じられる。「文学はおとしまえをつけてくれる」と言い、「死か、嘘か」という絶望的な選択を提示しながら決して死には向かわないその強靭さが、セリーヌを盆百の「過激」で「アナーキー」な作家と隔絶する。
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