恩師日高敏隆が亡くなり、まる3ヶ月がそれまでと変わらず過ぎた。先週末、添え状とともに奥様から本書が送られてきた。それは、先月遺影にお参りして来たことへのいわば香典返しにあたるものだろう。
本書のあと書きで、村上陽一郎が「日高さん。長生きしてください。そして、私たちを喜ばせる本を、もっと書いてください」と、切なる願いとして記されている。その日付が、21年10月。その後1ヶ月余りにして、日高敏隆はその人生を閉じている。村上ばかりでなく、多くの多くの人たちの願いもむなしく。
日高敏隆は、動物行動学者として紹介される。それはその通りなんだろう。しかし、本書を読んでみればわかるが、彼の思いは動物行動学と言う枠組みでくくるのはどうも違う気がする。
特に本書がその遺作であり、最晩年のエッセイであることを念頭に読むと、日高は哲学者であり、面白いくらいのさみしがり屋のヒューマニストであることがわかる。人や風景を含めた自然をこよなく愛し、冷徹な科学者の目と言うより、一個のナチュラリストとして暖かく我々を見守ってきた人だとわかる。
身近に触れてきた人間として、一ページをくるごとに、目が潤んで読み進められない。耳元で、あの声が聞こえるような、本書をお薦めする。