サイコスリラーといえばあの
羊たちの沈黙 [Blu-ray]の爆発的成功後、雨後の筍のようにB級作品が乱造された記憶がある。「『羊たちの沈黙』の重厚な完成度とレベルの高さに匹敵するレベルのものなんて、出るわけねーよ。」と僕は当時たかをくくっていた。
そこに表れたのがこの名作『セブン』だ。
今回改めて観劇し再度実感した点がある、クールで洗練された画調の本作は、練り上げられた脚本を登場人物のけれんのない演技でテンポよく演出され、抜群に面白い。作品全体のストーリー・テリングの素晴らしさと脚本・演出を含めた完成度の高さは多くのレビュアの方が記載しているので、個人的に印象に残ったところを書いてみたい。その中でも際立った点が以下だ。
・ジョン・ドゥの設定のリアリティ
何処の誰かもわからないのに、金と教育があり育成過程がまったく見えない男。それを演じたケビン・スペイシーの抑えた演技が秀逸で、ジョン・ドゥという人物の奥底にある恐ろしさを深く見せる事に成功し、虚無感と恐怖をもって迫って来る。
・トレイシーの愛らしさ。
ミルズの妻役を演じたグウィネス・パルトローの演技が本当に素晴らしい。控え目で繊細な演技にも関わらず、トレイシーの初々しさと愛らしさと寂しさを十二分に表現しているため、ラストのおぞましさと虚無感が『ズン』を胸に来る。
『羊たちの沈黙』もそうだが、名作として名を残してゆくものは、ただ「お話が面白い」だけでなく、観る者を--(愛の形は色々あるだろうが)--惚れさせる何かをもっているものだな〜、と実感した次第だ。