「オカズ系は、エロ本やアダルトDVDなど、マスターベーションをサポートしてくれる
メディア……出会い系は、出会い系喫茶や出会い系サイトのように、パートナーを見つける
ためのツール……性サービス系は、性風俗店舗やその紹介サイトのように、実際に
性サービスを受けられる、および性サービスへのアクセスを行ってくれるメディアのことだ。
……『オカズ系』、『出会い系』、『性サービス系』、いずれのメディアも、この数十年の
間に大きな変化を遂げている。それまでは存在しなかったような新興サービスが世を賑わせ、
新しいビジネスとしてあっという間に定着していった。本書ではその系譜に注目しながら、
セックスメディアが、何によってどのように変わっていったかを記録していく」。
序盤に関しては、家庭用電話からケータイ、ネットへのパーソナルメディアの変遷と
それに伴うコミュニケーション様式のシフトについてセックス産業を媒介に記述するという
昨今の社会学に典型的な回りくどいアプローチなのかな、と思いつつ読んでいたが、
進むにつれてそのテイストを一変させる。
いつしか中心軸は各々のコンテンツにおけるトップランナーへのインタビューに移行し、
あらゆる産業においてそうあるように、アングラの雛型としての「セックスメディア」から
情報化社会下におけるオープンな競争モデルへの転換の中で、知恵と工夫を重ねることで、
いかにして成功へと辿り着いたのか、という起業家たちのイノヴェーションへと話は進む。
とりわけTENGAの創業者インタビューは、ウェルメイドな「プロジェクトX」を
思わせるもので、アントレプレナーのサクセスストーリーとして出色の完成度。
そうした点で、本書は「セックスメディア」をめぐるビジネス書として読まれるべき一冊。
エロ規制と警察利権やヤクザの問題などにも多少の言及はあるが、基本的には
このジャンルにおける陽の部分を取り扱ったテキストとなっており、陰の部分を
勘繰りたい、というニーズに応えるものではない。
その表題ゆえに手に取りづらいこともあるいはあるかもしれないが、一般教養として
真面目に推奨できる一冊。