ジャレド・ダイアモンドの本はどの本を読んでもおもしろいというか、いろいろ感心させられる。
ただ、本書には、表題の「セックスはなぜ楽しいか」ばかりが書いてあるわけではない(むしろこの点については歯切れが悪い)。また、「なぜ、男は授乳しないか」も興味が湧きにくいテーマである。
概していえば、内容的には、立花隆の「
サル学の現在 (上) (文春文庫)」辺りを読んだ人なんかに受けるのではないか。
自分なりの理解では、本書で描かれるのは、端的に言えば、「なぜ男性は性交後も女性の元に留まり、パートナーとして育児を手伝うのか(他の女性と性交して子孫を残すという機会を利用しないのか」という点。
それから、育児を手伝う男性、子育てをしない閉経後の女性が人間の進化上、どのような役割を担ったかという2点であろう。
一点目については、男性が育児をサポートしない限り、自立が遅い(という特殊性を持つ)人間の子供を女性一人では育てることができず、結果的に育児をサポートできない男性の遺伝子は生き残れないということが起こった。
また、女性の排卵が男性に隠蔽されていると、1)誰が父親か分からないので子殺しのリスクを避けられる(男性は自分の子であるリスクを冒して子殺しはしない)、2)いつ排卵するか分からないので、女性の元を離れると別の男性による受精のリスクを冒すことになる(ので離れられない)、ということになり、実は、育児のサポートを必要とする女性にも都合がよい(女性自身にも排卵が隠蔽されている理由は謎)。
二点目の男性の育児中の父性の伝達や閉経後育児にかかわらない女性による知識の伝達が、人間の進化上、重要な役割を担ったという考え方は新しいと思う。
他の本を読んでいると、「浮気」と言っても男女で捉え方に差があるという。
男性は、女性の肉体的な浮気を嫌がり、女性は、男性の精神的な浮気を嫌がるとされているが、上記のような、人類学的観点から見た男女関係とも整合的(男性が嫌がるのは、知らない間に他の男性の種を宿して、他人の子を育てることになること)な気がして、改めて感心した。