登録情報
|
これまで、フェミニスト心理学というとジェンダーの問題ばかりが取り上げられ、セクシュアリティが論じられてこなかった点を踏まえ、「セクシュアリティをめぐる差別の心理学」を平易な言葉で語っています。ほとんど講義録のように読みやすく出来ています。沢山の引用がありその論点に意見や反論を述べている章と、例えば「女性のセクシュアリティと母娘関係」といった章のようなスムーズな「語り」を読ませる部分との落差も、結構楽しめます。十八番の、サブカルチャー(少女漫画)を読み解くページもありました。
最後近くで、「フェミニズムは構築主義が理解できる知的エリートの独占物になってしまった」ので「(母性を生きがいにしているような多くの人に)きわめて冷淡な思想になってしまった」とあります。フェミニズムにとっての武器として構築主義が不可欠だとしても、この嘆きに共感する人は多いのではないでしょうか。
この本は、(大学の先生御用達の)有斐閣選書なだけあって、学術的で難解な部分がある。でも、少女漫画分析や摂食障害事例、ベビーM事件などの具体例を出していてあきさせない。
特筆すべきは、読者が限られているためか、けっこう「そんなん言っちゃってもいいの?」的なことをはっきり書いている点だ。例として「『ヤンキー』早婚の法則」(母親から十分な愛情を受けなかった娘が、早婚で母になり、また十分な愛情を娘に与えてやれず、「ヤンキー」の悪循環が起こる)などがある。
性同一障害についての記述で「当事者の立場は尊重するという前提に立って、あえて私が問いたいのは、ジェンダーが不快である場合、改変すべきは身体ではなく、ジェンダー社会の方ではないかということです」という主張に同感だ。その苦しみは本人でないとわからないのかもしれないが、戸籍や身体を改変してまで、「男」「女」というカテゴリーに入ることは幸せにつながるのだろうか?もっと自由な生き方はないのだろうかと疑問に感じてきた。何がベストかは今だわからないが、自らのセクシャリティとジェンダーについても同様に考えて見るべきなのだろう。
|
|