登録情報
|
それは、子供への虐待。しかも性的なそれを本書が主題としているからにほかなりません。ここに語られている著者の取材の結果は、将に戦慄すべきというのがぴったりです。しかもそれが非常に淡々と語られているのがとても恐ろしい。殴る蹴るの虐待なら、昨今よく取り上げられ、社会問題として知られており、それに対する認知もある程度行われているように感じますが、親が子を犯す、このような類の虐待はニュースではほとんど見ません。認知しようにも生理的にそれを許さない、というところがあるのでしょう。ただの暴力なら客観的に見られることでも、性的な問題となると何か眉をひそめるだけではすまない部分が、私たちの中にはあるように思えてなりません。どこか他人事では済ませれないものを感じて、「無かった事」にしてしまいたい衝動に駆られる。
しかし、本書はそんな企てを水滴が岩を撃つように削り取ってしまいます。それでもあなた、見ないことにするのですか?とじわじわと迫られて、読んでいるうちに直視せざるを得なくなり、読んだ後はへとへとになってしまっているのです。ルポタージュであり、体系的に性的虐待について論じているわけではありませんが真に迫っていると感じました。
本書を手に取った人がみな虐待に対して立ち上がる必要は、必ずしも無いと思います。しかし、著者も言われているように、ひょっとしたらあるかもしれない、という意識は重要です。私たちの精神衛生を維持するために捧げられる人身御供は、一人でも減らさなければいけない。