原題は「The Making of Second Life」となっており、セカンドライフがどう産まれ、ユーザがどう使い、どういう問題が起き、どう発展してきたのかが手に取るようによく分かる貴重な本。翻訳書のタイトルのように「ビジネスを創りかえる」云々に限らず、セカンドライフがどういう世界なのかを伝える内容。著者自身がセカンドライフをヘビーに使った実体験から執筆しているので、先入観や邪推からくる不正確な記述がなく、上っ面をなぞるだけのような薄い内容でもなく、マニアックで煽動的な記述もない。まさに本格的な内容で、プロフェッショナルなテクニカルジャーナリズムというのはこうあるべきだという質と量を見せつけてくれる。
セカンドライフでのキーパーソンにインタビューするのも、ときにはセカンドライフ内、ときにはセカンドライフ外、ときには両方でしており、セカンドライフユーザが現実世界と仮想世界でどう生活していていて、セカンドライフの住人にとっての価値観が何なのかがよく理解できる。各論としては、ユーザがこれまで何に対して抗議や争乱を展開したのか、そしてどういう経緯でリンデンラボの収益モデルや知的所有権に対するポリシーが産まれたのか、またその後出現した起業家や資本家、不動産王の生業などが印象深い。現実世界の企業がセカンドライフに進出するときにマーケティング上考慮すべきポイントも、なるほどと思わされる。セカンドライフ誕生後の初期をアメリカ誕生後の一世紀と比較するなど、著者のアナロジーには興味深いものが多い。社会契約論って何だっけ? ホームステッド法って何だっけ? 等々、調べものをしながら楽しく読了。