長銀は、好況の時代に産業界の顧客への融資を通じて発展し、80年代には不動産融資でポートフォリオを広げ、2000年に米国のコンソーシアムに買収されて、現在は新生銀行として再生を図っている。この驚くべき紆余曲折の物語は、文化的にも、政治的にも注目に値するが、テットはさらに、この銀行に見られる問題点は、日本経済全体がかかっている病理を示していると考える。彼女は、日本は旧態依然のビジネスのやり方に頼った結果、不良債権を増やし、1990年代に銀行システムに総額1兆ドル以上の負担を負わせることになったのだと論じている。そして長銀の破綻と買収は、大勢の返済に行き詰まった債務者に厳しく対応することができなかったことによる当然の結末だと考えているのである。あくまで事業と割り切った米国のコンソーシアムは、存続可能な市中銀行へと生まれ変わらせる展望をもって長銀を買収したが、まもなく、隠されていた莫大な不良債権とコンソーシアムの新しい事業戦略に対する予期せぬ抵抗に直面した。真に迫った本書での、テットの歯に衣着せぬ分析は、議論を呼ぶに違いない。なぜなら非難の矛先が、総意を重んじる考え方、調和、階層制度、島国根性、変化への抵抗、とくに外国人による変化への抵抗といった、彼女が麻痺を起こさせる伝統とみなしたものへと向けられているからだ。
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5つ星のうち 5.0
バブルを理解する一冊。金融業界の文化を理解する,
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レビュー対象商品: セイビング・ザ・サン―リップルウッドと新生銀行の誕生 (単行本)
記憶にも新しいですが、長銀(日本長期信用銀行)が米国の外資系ファンドに買収され、新生銀行になるまでの過程を小説風に当事者達の視点から描かれております。本書の素晴しい点は、長銀を取り上げていますが、日本の銀行が戦後どのような役割を持って政府によって作られ、役割を期待され担ってきたのか。そして、80年代の誰にも止める事ができなかったバブル。政府が悪いのか、システムが悪いのか、銀行の経営者が悪いのか、企業が悪いのか。と言った、銀行の歴史、文化、銀行経営の考え方なども書かれている点がひとつ。 そして、2点目は小説風に書かれているため、飽きずに読み進める事が出来る点。特に長銀の頭取であった大野木氏については、長銀入行からイギリスでの駐在、経営企画部など経て頭取になり、逮捕されるまでの人生、ドラマがあり非常に興味をひかれます。銀行の向かう方向性に矛盾を感じ、声をあげるも実現できずに、社会・時代の流れに流されていく葛藤が描かれています。 前半は長銀が上記のような歴史を経て、買収される経緯。後半は外資系の投資家達が旧長銀、新生銀行をいかに立ち上げるか、日本人との文化的な対立や、政府の対立・交渉を通じて、日本に新しい風を吹き込もうとする想いと難しさが、これも登場人物の視点から描かれており、面白く読めます。 日本の金融機関で働いている方は既読かも知れませんが、働こうと思っている方や金融機関を相手にビジネスをされている方などにお勧めです。また、バブルをあまり知らない世代(今20代中盤以前)の方にもバブルがどのようにして起こり、崩壊していったのかを理解するうえで、ためになると思います。
11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
この10年は何だったのか?,
By その背景になった土地への投機、融資を行っていた銀行がどのように物事を進めていたのか分かります。紋切り型にアメリカ式経営と日本式経営と2つに分けて考える層の単純さも面白く描かれています。市場原理の冷たいアメリカ式と言いたいのでしょうが、セーフティネットがしっかりしていて人口一人当たりの社会保障費用が日本より高い環境を背景とした経営手法を日本に持ってくるなというなら理解します。 金融のビッグバンの前にアメリカに阿らないで、日本には独自のモデルがあると言い切れなかった弱さが徐々に露呈していく様は、別な分野でも同じ轍を踏まないよう警笛を鳴らしていると感じます。
15 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
プライベイト・エクイティの世界,
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レビュー対象商品: セイビング・ザ・サン―リップルウッドと新生銀行の誕生 (単行本)
新生銀行はプライベイト・エクイティビジネスの最も成功した例であるといえるでしょう。 プライベイト・エクイティの中には、 利益移転を行うだけの、いわゆる「ハゲタカファンド」的なもの もたしかに含まれる。 しかし、プライベイト・エクイティはそれ以外に、 企業を再生し、それによって自身のファンドも利益を得る そういう形のアプローチももちろんある。 そして、新生はこの典型的なパターンだ。 浅はかな分析をする人は、 政府のつけた「プット条項」を噛み付いて、 リップルウッドを「ハゲタカ」と片付けて、 問題の本質に全く触れることがない。 しかし、本書はその点を十分に踏まえ、 日本のジャーナリズムにはよく理解できなかった、 (彼らは「ハゲタカ」と書くのが大好きだ。) プライベイト・エクイティの、 本当の姿を描き出している。 この点で、この本は非常にすばらしい。 アメリカで盛んになったプライベイト・エクイティが 日本でも本格化するかどうかは分からないが、 このビジネスは、日本においても確かな機会があり、 それを本書は紹介してくれているように思える。
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