まさにタイトルどおりの“ズームー”との日々が、淡々と綴られていく。
井上荒野さんにしては、本当に淡々と。ニヒルさもアンニュイさも影をひそめ、
『森のなかのママ』のような明るくハイな作品でもなく、『だりや荘』や『学園の
パーシモン』の、息詰まるサスペンスとシリアスさもなく・・・・・・。
主人公の「私」は、本を一冊書いたきりの売れない小説家である。
あるテレビ番組に司会者として出演したことから、そこでADとしてアルバイトを
していたズームーと出会う。
8歳年下のズームーとの7年間の日々。暮らしや生活といったなまなましい匂いは一切ない。
愛の日々というにはあまりにも弛緩した時間が流れている。
「私」はズームーともう一人の男の間で揺れ動くのだが、揺れ動くのは「私」の
心だけであって事件らしい事件はなにも起こらない。
おもしろいのは、その恋の動向より、「私」がのめりこむフィットネスやら美白やらの
エピソードだ。
のめり込んでいく気持ちの傾き方がなんだかとても滑稽なのだ。
何もしない日々。本当に何もしない7年間を過ごし、終わったズームーデイズ。
最後の章でズームーと別れてからさらに9年がたったことが明かされる。
作中に織りこまれた「私」の来歴や父親のことなどを考えあわせると、この作品は
荒野さん自身のことが幾分かは投影されているのかなと、下品にも私は勘ぐって
しまうのだが、反対に、いかにも読み手がそう読んでしまうようにうまく操作された
作品なのかなとも思ってしまう。
まさに、「いたたまれないのに、忘れられない日々。」となった時、人は過去を手に
入れるのかもしれない。