やさしい語り口と文章で、コミック・キャラクターを作る際のヒントをまとめたとても読みやすいマンガ論。本文はすべてモノクロで、ほぼ文章で構成されている(ただし挿絵はとても多い)。
※あくまで「論」であって、キャラクターデザインや作画技法など、ビジュアル的な解説はないことに注意してもらいたい。
アメコミ・手塚治虫などのマンガ作品、ギリシャ神話などの伝説、夏目漱石「こころ」などの文学作品、ヒッチコックの映画「北北西に進路とをれ」など、さまざまな例をもとに、キャラクターの性格や分類、描写方法、キャラクターを演技させる(動かす)ポイントを解説している。
こうした作例と合わせて、「フライタークの曲線」や、ロジェ・カイヨウの分類した4つの遊び、「ジョハリの窓」など、アカデミックな分析も解説しており、参考になる。
また、文章と合わせ、表紙・本文の挿絵も良質だ。描き手は大阪芸術大学の学生(古澤由貴、PNは楠木メルコ)とのことだが、2等身〜8等身、コミカルな絵まで、文章にあわせた絵がきちんと描かれている。
ヤングアダルトコーナーのマンガ講座本・入門書としてよい出来だと思う。
しかし、専門学校や大学生を対象とするには、あまりに基本的で浅く、マンガ論としても偏りのある内容だ(タイトルに「セミナー」とあるので、対象読者としては専門学校生などを考えているのだろうが)。
過去の作例の引用がまったくないため、マンガ論として資料性に乏しいし、また、少女マンガの作例や、1990年代〜現在に至るまでの例がほとんどなく、偏った構成になっている(「かわいい」の作例がハローキティやポケモン、等身の違いなどしかあげられないのも、例としてとても弱い)。
筆者は1969年法政大学文学部英文学科卒、『子連れ狼』などで知られる小池 一夫に師事したとあるから、扱う作例が古い少年〜青年マンガ、純文学、古典映画だったのもある程度仕方がないことだとは思うが……年齢の高い読者にはお勧めしない内容である。