この作品に、一貫したストーリーは存在しないと言って良いでしょう。
開幕時点で主人公のように見える人物は早々に脇役になりますし、冒頭で仰々しく提示される謎は肩すかしに思えるほどあっさり解決してしまいます。
しかし、それでもなおこの作品は面白い。
それはやはり、キャラクターの魅力、軽妙なリズムの会話、ちょっとだけ昔の(失礼)翻訳SFによくあったような言語感覚、そういった点に負うところが大きいでしょう。
小説はストーリーが第一義であるとか、あるいはSFは科学考証がしっかりしていなければならないとか、そういった主張をお持ちの方にはきっと合わないでしょう。
しかしながら、そうおっしゃる方にはフィリップ・K・ディックやハーラン・エリスンの作品が一級の小説、一級のSFとして評価されていることを思い出していただきたいのです。
ラノベ臭がする? 拍子が萌え系? それがどうしました。一級のSFを美少女のイラスト付きで楽しめるのです。
「人工知能の幸せとは何か」という深遠な哲学的テーマを、平易なラノベ調で読めるのです。素晴らしいではありませんか。
何も考えずにキャラ萌えするも良し、深いテーマに共感するも良し。まずは食わず嫌いするに読んでみて下さい。あなたの期待を裏切らない作品です。