本書よりも後に書かれた別の書籍「
減速思考」が、ITメインで執筆されたものだとすれば、本書は生活・社会全般について考察されたものです。
産業革命以降、繰り返し起こった戦後の日本を含む急激な経済成長により、物質的に人間は豊かになりました。
いや、それでも国ごとの格差はあり、それを埋めるために新興国はさらに「もっと早く(速く)」と成長を目指してきました。
そのしわ寄せとひずみが、先進国を中心に発生しています。
ファストフードというシステムを維持するために、多くのエネルギーが消費される。
家族の団らんも会話もない「エネルギー摂取」の食事が、コミュニケーション不足を生む。
食事一つとっても、「スピード主義」の弊害が表れてきています。
そこに使われた技術や手法自体は決して悪ではなくても、それを使いこなすはずの「人間」が、うまく使いきれずにいる。
まるで、暴走する車を操作しきれない状態に来ているのではないでしょうか。
本書は、食事・街・運動・移動手段など、いろんな角度から現状の問題と、それと対極にある「スローライフ」について解説しています。
いくつかの「スローライフな生き方」には、著者自身の体験もあり、説得力があります。
本書でも書かれていますが、スローライフとは決して「単にスローにする」のではありません。
本当に人間に合った時間・ペースを取り戻すのが、ここで説かれていることではないでしょうか。
スローライフとは、決して怠けることでなく、「人間本来の幸せとは何か」を考察する生き方ともいえるのかもしれません。
忙しい、それこそ漢字通り「心を亡くす」現代人にこそ、読んでいただきたい一書です。