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31 人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
偉大なノンフィクション作家山際淳司,
By ke-ke-chan (新潟県新潟市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962)) (文庫)
著者の山際淳司は偏りを持った取材をしているライターが多い中で、取材相手と自分の位置関係を適切に保つノンフィクションライターである。したがってこの作品もノンフィクションとか小説ということではなく、ルポとして読むといいのではないか。作品は、1979年夏の甲子園の箕島対星陵の3回戦の「八月のカクテル光線」、1979年広島対近鉄の日本シリーズ最終戦の「江夏の21球」、ボート競技ででオリンピックを目指した「たった一人のオリンピック」、プロ入りした投手の野球人生を描いた「背番号94」、かっこよさにこだわるボクサーの「ザ・シティ・ボクサー」、 スカッシュの十年連続日本チャンプの「ジムナジウムのスーパースター」、マイペースな練習で超スローカーブを勝負玉とする高校球児の「スローカーブをもう一球」、棒高跳びにチャレンジする「ポールヴォルダー」で構成されている。 ここでは「江夏の21球」を紹介する。昭和54年広島対近鉄の日本シリーズ第7戦9回裏、江夏が自らノーアウト満塁のピンチを作り、そして自らそのピンチをくぐり抜け優勝するのだ。江夏が投げたたった21球。その一球一球を追いつつ、江夏を中心にバッター、ベンチ、バックネット裏に交錯する心理を巧みに描写している。たノンフィクションの傑作である。特に、古葉監督がリリーフをブルペンで準備させているのを横目で見た江夏が憤り、それを察知した衣笠の「オレも同じ気持ちだ、お前がやめるんならオレもやめる」の一言で江夏が冷静を取り戻す情景描写は見事。 山際氏の文章はさらりとしていて、余計な修飾語や押し付けのような批判はしない。しかしそれでいてその場面の風景や人間模様が頭に浮かび上がってくるの不思議で仕方がない。 余談であるが、山際氏が1995年に46歳という若さでなくなったことは、日本のスポーツジャーナリズムにとって、非常に惜しいことだと思う。
19 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「たった一人のオリンピック」が一番のお気に入り,
By
レビュー対象商品: スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962)) (文庫)
スポーツもののノンフィクション短編集。ノンフィクション賞受賞作「江夏の21球」も江夏のすごさを感じるが、私はこの本の中の「たった一人のオリンピック」が一番のお気に入り。さえない大学生がある日突然「オリンピックに出よう!」と思いつき実行してオリンピック日本代表になってしまう話。ボート・シングルスカルの津田真男さんの生き方が痛快で面白い。 平凡な毎日から抜け出したいと思い、時間を止めて非日常的なことを実際にやってしまう。同じ思いはあるが、はたして自分に同じことをやる勇気があるだろうか?山際さんの冒頭の書き出しはとても考えさせられる。
14 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
影を描く。,
By masaoasis (埼玉県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962)) (文庫)
時おり、無性に山際淳司の作品を読みたくなるときがある。シャツが汗でまとわりつき、夏の甲子園をテレビで放送し始める季節は特にそうだ。 彼の作品はどれも一定の水準を保ち、読ませる力を持っていて、決して期待を裏切らない。 その中でも、この作品がやっぱり一番のおすすめだ。他の作品に比べて、全体のクオリティーが高い気がする。 我々が熱い歓声を送り熱狂するスポーツの背後にひそむ様々なドラマを彼は淡々と、客観的な視線で描いている。我々が目にしている部分が光だとすれば、彼は一貫して影を追い続けている。 そして、彼の視線を通じ、その影を知ることによって、我々は光の眩さをさらに思い知ることとなる。それは、スポーツという枠組みを越え、ある種のヒューマンドラマともいえる。 野球ファンを自認する人は、「江夏の21球」は必読です。
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