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作品は、1979年夏の甲子園の箕島対星陵の3回戦の「八月のカクテル光線」、1979年広島対近鉄の日本シリーズ最終戦の「江夏の21球」、ボート競技ででオリンピックを目指した「たった一人のオリンピック」、プロ入りした投手の野球人生を描いた「背番号94」、かっこよさにこだわるボクサーの「ザ・シティ・ボクサー」、 スカッシュの十年連続日本チャンプの「ジムナジウムのスーパースター」、マイペースな練習で超スローカーブを勝負玉とする高校球児の「スローカーブをもう一球」、棒高跳びにチャレンジする「ポールヴォルダー」で構成されている。
ここでは「江夏の21球」を紹介する。昭和54年広島対近鉄の日本シリーズ第7戦9回裏、江夏が自らノーアウト満塁のピンチを作り、そして自らそのピンチをくぐり抜け優勝するのだ。江夏が投げたたった21球。その一球一球を追いつつ、江夏を中心にバッター、ベンチ、バックネット裏に交錯する心理を巧みに描写している。たノンフィクションの傑作である。特に、古葉監督がリリーフをブルペンで準備させているのを横目で見た江夏が憤り、それを察知した衣笠の「オレも同じ気持ちだ、お前がやめるんならオレもやめる」の一言で江夏が冷静を取り戻す情景描写は見事。
山際氏の文章はさらりとしていて、余計な修飾語や押し付けのような批判はしない。しかしそれでいてその場面の風景や人間模様が頭に浮かび上がってくるの不思議で仕方がない。
余談であるが、山際氏が1995年に46歳という若さでなくなったことは、日本のスポーツジャーナリズムにとって、非常に惜しいことだと思う。
さえない大学生がある日突然「オリンピックに出よう!」と思いつき実行してオリンピック日本代表になってしまう話。ボート・シングルスカルの津田真男さんの生き方が痛快で面白い。
平凡な毎日から抜け出したいと思い、時間を止めて非日常的なことを実際にやってしまう。同じ思いはあるが、はたして自分に同じことをやる勇気があるだろうか?山際さんの冒頭の書き出しはとても考えさせられる。
「すっかり薄く丸くなってしまった石鹸を見てちょっと待ってくれと思うことはないだろうか。まるで自分のようではないか・・」
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