カメラという機械、それも電気系統だの何だのよくわからないブラックボックスが入り込む前の、ギアとシャフトとスプリングで構成された金属製品がお好きな人々にとっては、極めて共感できる内容の1冊だろう。
散歩して、機械をいじって、露出を考えて、ピントを合わせる。機械式カメラは老人の脳トレーニングにもぴったりだ。そして、本書にはそういった機械式カメラを楽しむための、様々なコツが満載されている。
ただ、その際に撮影された映像をどのように評価するかは、また別問題となる。
いっそのこと、フィルムを入れずに空シャッターだけ切って、脳内写真だけ楽しんでおけばよいかとも思うが(脳内写真よりもよく取れる機材はまず存在しないし)、空シャッターはカメラに負担をかけるし、一部にはフィルムを装填しないと全ての機能を発揮しないカメラさえもあるので、やはりフィルムを無駄にするほかないだろう。
現像せずに、テスト用フィルムのみを使いまわすというのが、環境に優しいカメラマニアの道なのかもしれない。
田村氏の写真はすばらしいが、こういうマニア向け文庫で「消費されてしまう」のは、いささか惜しい気もしなくはない。
ともあれ、写真がすばらしいのは何よりの救いで、評価は写真に対するものだ。
しかし、たとえ数倍の価格でも、ちゃんとした写真集を出してほしかった…