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スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察
 
 

スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察 [単行本]

長 有紀枝
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

国連の「安全地帯」に指定され、PKOオランダ部隊が展開するボスニア東部の町スレブレニツァ。ボスニア紛争末期の1995年7月、「第二次世界大戦以来の欧州最大の虐殺」はなぜ起きたのか。将来の「スレブレニツァ」をどう予防するのか。「人間の安全保障」の視点から捉えた本格的ジェノサイド研究。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

長 有紀枝
1963年東京都に生まれ茨城県で育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院政治学研究科修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム博士課程修了。博士(学術)。外資系企業勤務を経て、1991年より2003年まで難民を助ける会に勤務。緊急人道支援、地雷対策、障害者支援、地雷禁止条約策定交渉などに携わる。2008年より認定NPO法人難民を助ける会理事長。認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム共同代表理事。都内の大学や大学院で教鞭もとる。2009年より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 397ページ
  • 出版社: 東信堂 (2009/02)
  • ISBN-10: 4887138857
  • ISBN-13: 978-4887138858
  • 発売日: 2009/02
  • 商品の寸法: 21.4 x 15.6 x 4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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 映画「ホテルルワンダ」を見て依頼、虐殺(ジェノサイド)の問題を考えるようになりました。94年のたった100日間で80万人が虐殺されたルワンダの虐殺。何でそんなことが起こってしまったのか。
 本書はボスニア紛争下の95年に起きた虐殺(10日間で7500人と言われる)のプロセスを研究・解明した研究書です。虐殺を生き延びた人の手記などいわゆるノンフィクション=ドキュメンタリーではありませんが、本書は情報が統制された紛争下、というより情報が隠蔽され、消し去られている事件に、入手しうる情報を比較検討しながら挑み、虐殺の真実を解き明かそうとする極めて画期的な研究だと思いました。
 著者の博士論文がベースの本書は横書きになっていることもありノンフィクションに比べて一見無味乾燥なイメージを受けますが、2章「スレブレニツァで何が起きたのか」、3章スレブレニッアの陥落」は時系列を正確に記述しながら、取り返しのつかない残虐行為が伝播・拡大する様を刻々と追っています。その場に居合わせているような臨場感に戦慄を禁じえませんでした。
 人類の歴史とともに長い「虐殺」ですが、虐殺に政府が関与していることが多いため、一国一国の対応により解決と抑止を期待することは出来ませんでした。それには国連主導の超国家的な合意が必要であり、国際法の整備(条約の批准等含む)をもって初めて犯罪として認定されたと本書にも書いてあります。
 我々の周りには直接的な虐殺はありませんが、今は企業体の経済的合理性の観点から許されている「派遣切り」のような問題も、あれは犯罪であったと言われるようなそんな時代が来ることを願っております。しかし問題の解決は一国単位では不可能と言うことです。虐殺の抑止であれ、核軍縮であれ、超国家的合意形成が不可欠であったのと同様に、労働者の生存権の問題も超国家的な法整備なくして解決することは不可能と思われます。
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形式:単行本
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争最中に起きたジェノサイドについて、我々はどれだけの知識を持っているだろうか?
1995年7月、ボスニア東部の小さな町、スレブレニツァはセルビア人共和国軍の攻撃に遭い、あっけなく陥落したが、その際におよそ7500人のムスリム人男性(ボスニア人)が行方不明となり、その内6000人は組織的に殺されたと見られている。

本書は、まずそもそもジェノサイドとは何か、その定義をめぐっての歴史的背景から書き起こす。続いて、スレブレニツァで実際何が起きていたのか、背景となるユーゴスラビア紛争、1995年当時のスレブレニツァを巡る政治的、地政学的状況を解説。その上で、第2次大戦以後欧州で最大の虐殺と称されたその虐殺劇(ジェノサイド)を、時系列的に丹念に追う。更に、スレブレニツァの虐殺をポスト冷戦期に起きた他の2つの、ルワンダとスーダン(ダルフール)を舞台に起きた(起きている)ジェノサイドと比較、その異同を考察。最後にジェノサイド予防に何ができるかを考察して締めくくられる。

このスレブレニツァの虐殺は、セルビア軍による組織的凶行であったが、特異な点は、国際社会からの介入が虐殺と同時並行的にあったこと、そして、国連のプレゼンス(オランダ軍を主体とした国際連合保護軍:UNPROFOR)が虐殺に巧みに利用されたことにある。セルビア軍はスレブレニツァ陥落にあたり、男性のみを分別して隔離し、ジュネーブ条約に基づいて取り扱うと言った言葉を弄してボスニア人と彼等を保護すべきUNPROFORを油断させた上で、極めて組織的に殺害を実行した。セルビア側は、UNPROFORオランダ隊の制服を着、そのパトロール車両を用いて、隠れているボスニア人に投降を呼びかけることさえしたのである。

読み進むにつれ、この虐殺に対して、十分な支援を受けられなかったUNPROFORが如何に無力であったかに失望を禁じえない。ルワンダにおけるジェノサイドもそうだが、実行すると強固に決意した存在(スレブレニツァではセルビア側)を前にした時、国連のプレセンスというのは必ずしも効果を持ち得ないのである。

尚、元々が博士論文なだけに、冷静な筆致、得られる情報を十分吟味して不明な点は不明としつつも、自らの仮説を展開する、その検証過程はまるで科学論文を読んでいるかのようで、本書の内容の確かさが察せられる。そのように学術的でありながらも記述は緊迫感に溢れ、大著にも関わらず不謹慎な言い方をすれば、退屈を感じない。また、著者の立場としてはあくまでも客観的立場を貫いており、なぜスレブレニツァでセルビア人による虐殺が起きたのか、必ずしもボスニア人側を一方的な被害者として記述していないことも付け加えたい。虐殺以前に何もなければ、やはりこのような事態にはなっていないはずなのだ。

唯一不満に感じたのは、何故このような虐殺を人間が起こしうるのか、それは人間の持ちうる生得的性質であるのか、という疑問には答えが用意されていないことである。それが本書の守備範囲を超えることであるのは重々承知しているが、どうしてもその疑問を感じざるを得ない。

ちょうど、今年はスレブレニツァのジェノサイドを主導したセルビア人指導者、ラトコ・ムラディッチが逮捕された。今後国際戦犯法廷によって裁判が進められるであろう中で、本書を読んで予備知識を得てはどうか。
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