書名の意味は、スルメという、死んで加工され静止した状態になっているものを見て、生きて動いているもとのイカがわかるのかという疑問を意味している。人間が種として社会化を進め、相互にコミュニケーションを行なっていく上でやりとりされる情報は、ほとんどこのスルメのようなものだ。一方で自然や世界のありようは、生きているイカ的な混沌そのものという性質を持っている。第3章「原理主義を超えて」ではダーウィンの進化論や資本主義が批判的に検討されているが、養老も茂木も、いわばこうしたスルメとイカのギャップを気にかけている点で共通している。
一方、そこからさらに展開された第4章「手入れの思想」では、手つかずの自然に人間が人工的にある程度の手入れをすることの積極的な意味が語られる。養老によれば、子どもの教育に関するあるべき態度がまさにこの手入れであり、茂木によれば自分自身の脳、無意識に対してさえも手入れをしていくことが重要だという。対象のすべてをコントロールするのではなく、適宜手入れをすることで調和をはかるかかわりあい方は日本人になじみやすい知恵だ、という指摘は興味深い。(松田尚之)
登録情報
|
|
あなたの意見や感想を教えてください:
|
||||||||||||||||||||||
|
最も参考になったカスタマーレビュー
32 人中、27人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0
バトンタッチの本か,
By
レビュー対象商品: スルメを見てイカがわかるか! (角川oneテーマ21) (新書)
面白く読めますが、その貢献度は圧倒的に養老孟司が上。特に第1章など、ほとんど議論がかみ合っていません。養老氏の議論に茂木氏が合いの手を入れるのですが、養老氏は意に介せず自分の話したいことを話し続けます。特に柱になるのが、「言語は同一性である」という主張なのですが、これは養老氏の昆虫友達でもあるらしい池田清彦氏が昔から一生懸命に展開している議論です。 第2章以下は、はっきり言って世間話。面白くなくはないけど、「脳科学者だから言える」というような内容ではありません。養老氏は「これだって脳の話だ」と言うかもしれないし、それは認めてもいいけれど、内容は限りなく「言いっぱなしの世間話」ですよ。ただ、ひとつだけ面白かったのが、「ある/ない」の対立は、「正しい/正しくない」のような対立とは種類が違うという養老氏の主張です。ハイデッガーみたいな感じもあるけど、養老氏が言うとハッとしました。 養老氏はエッセイストとしても筋金入りで、専門の解剖学から離れても自在に話題を繰り出せるプロですが、茂木氏はやはり弱い。言ってることも面白くない。 そういえば、養老氏が言語能力について脳の男女差があるのは明らかと発言してる部分があるんですが、茂木氏はそこで何も反応してない。茂木氏はどこかで、脳の生得的な男女差を言う議論に噛み付いて、それは科学的じゃないと言っていましたが、養老氏が言うならOKなんですか。いくら尊敬してる人とはいえ、公にする対談なのに、そこで口をつぐむのは迎合的としか言いようがない。今後は、茂木氏の文章はその程度のものと考えて読むことにします。 で、しかしこの本には、重要な役割があると思う。それは、これまで養老氏が果たしてきた脳科学スポークスマンの役目を、茂木氏に譲るという、バトンタッチのお知らせではないでしょうか。実際、出版物ばかりかテレビなどでも茂木氏の露出が急激に増えている印象です。
20 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
うむ。おもしろい。,
By カスタマー
レビュー対象商品: スルメを見てイカがわかるか! (角川oneテーマ21) (新書)
以下、面白いところを抜粋(ごく一部です)p8-9 じつは、歯が痛いといっていたのは、歯のことを知っていた からではなくて、脳の中にある何かを知っていたということ なのです。 よく私が議論することなのですが、外の世界が見えていると きに、脳の中にうつった物をむしろ私は知っているのです。 そういうことを考えると、われわれが知っているのは脳のこ とだけだということになってくる。 p10 言葉が話せないと施設に入れられる、ということは、 言葉は社会を構成する人の前提条件となっていることを現している。 ここに脳の新化の方向を決めてきた一番大きな要因の一つがある。 p10-11 数学もまた一つの言語です。数学が得意でないというのはどういうことか。 昔、家庭教師をしていたときに、「2AひくAは2だ」という学生がいた。 受け入れなくなっていき、結果的には数学が不得意となる。 情報は止まっているが、人間は動いている。 一つは停止したものとしての情報 こんなレビューは許されるのかな。
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
自然を見て人間がわかるか,
By
レビュー対象商品: スルメを見てイカがわかるか! (角川oneテーマ21) (新書)
対談ということで、ずいぶん柔らかい内容かなと思って購入してみました。 これがなかなか、目から鱗というか、 スリリングな読書となりました。 本書では、題名にもある通り、スルメからイカがわかるかということ、 広く言ってしまえば抽象化とか概念化とか言えるような事柄が 一方の大きなテーマになっています。 しかし、個人的には、 人口と自然という問題について語られている部分が 最近出版された茂木健一郎さんの「意識とは何か」という本で、
あなたの意見や感想を教えてください: 自分のレビューを作成する
|
最近のカスタマーレビュー |
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|