書名の意味は、スルメという、死んで加工され静止した状態になっているものを見て、生きて動いているもとのイカがわかるのかという疑問を意味している。人間が種として社会化を進め、相互にコミュニケーションを行なっていく上でやりとりされる情報は、ほとんどこのスルメのようなものだ。一方で自然や世界のありようは、生きているイカ的な混沌そのものという性質を持っている。第3章「原理主義を超えて」ではダーウィンの進化論や資本主義が批判的に検討されているが、養老も茂木も、いわばこうしたスルメとイカのギャップを気にかけている点で共通している。
一方、そこからさらに展開された第4章「手入れの思想」では、手つかずの自然に人間が人工的にある程度の手入れをすることの積極的な意味が語られる。養老によれば、子どもの教育に関するあるべき態度がまさにこの手入れであり、茂木によれば自分自身の脳、無意識に対してさえも手入れをしていくことが重要だという。対象のすべてをコントロールするのではなく、適宜手入れをすることで調和をはかるかかわりあい方は日本人になじみやすい知恵だ、という指摘は興味深い。(松田尚之)
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特に第1章など、ほとんど議論がかみ合っていません。養老氏の議論に茂木氏が合いの手を入れるのですが、養老氏は意に介せず自分の話したいことを話し続けます。特に柱になるのが、「言語は同一性である」という主張なのですが、これは養老氏の昆虫友達でもあるらしい池田清彦氏が昔から一生懸命に展開している議論です。
第2章以下は、はっきり言って世間話。面白くなくはないけど、「脳科学者だから言える」というような内容ではありません。養老氏は「これだって脳の話だ」と言うかもしれないし、それは認めてもいいけれど、内容は限りなく「言いっぱなしの世間話」ですよ。ただ、ひとつだけ面白かったのが、「ある/ない」の対立は、「正しい/正しくない」のような対立とは種類が違うという養老氏の主張です。ハイデッガーみたいな感じもあるけど、養老氏が言うとハッとしました。
2章以下では茂木氏も発言が増えますが、基本的に養老氏の言うことに同意するばかりで、対談というより養老インタビュー。茂木氏が話題提供した唯一の例は、流通性の話ですが、これだって養老氏が引き取って勝手に話してる。
養老氏はエッセイストとしても筋金入りで、専門の解剖学から離れても自在に話題を繰り出せるプロですが、茂木氏はやはり弱い。言ってることも面白くない。
そういえば、養老氏が言語能力について脳の男女差があるのは明らかと発言してる部分があるんですが、茂木氏はそこで何も反応してない。茂木氏はどこかで、脳の生得的な男女差を言う議論に噛み付いて、それは科学的じゃないと言っていましたが、養老氏が言うならOKなんですか。いくら尊敬してる人とはいえ、公にする対談なのに、そこで口をつぐむのは迎合的としか言いようがない。今後は、茂木氏の文章はその程度のものと考えて読むことにします。
で、しかしこの本には、重要な役割があると思う。それは、これまで養老氏が果たしてきた脳科学スポークスマンの役目を、茂木氏に譲るという、バトンタッチのお知らせではないでしょうか。実際、出版物ばかりかテレビなどでも茂木氏の露出が急激に増えている印象です。
ちょっと裏読みが過ぎるでしょうか。
昔、家庭教師をしていたときに、「2AひくAは2だ」という学生がいた。
たしかにそのとおりだが、数学としては間違っている。
「2AひくAは2」というのはその子の論理であるが、別の約束事で数学
が出来ていることを教えてやらなければならない。
しかしそんな約束事は誰が決めたのか、と考える子供だと、結局どんどん
受け入れなくなっていき、結果的には数学が不得意となる。
最初の約束事を飲み込まなければ数学はできない。
p11
私は日本語の文法を使っているが、私がいなくなると日本語の文法が変わるか
というとぜんぜん変わらない。つまり、脳の中に言葉があるのではなく、じつ
は脳の外に言葉がある。外にあるのは、声や文章です。
p12
人間と情報の一番大きな違い
情報は止まっているが、人間は動いている。
人間はいつも動いていて、二度と同じ状態がとれない。
p13
生きているということは、二度と同じ状態はとれないということ。
p13
つまり細胞が持っているような性質が、システムが持っている性質なんです。
細胞の中の止まってる情報がDNA。
p14
われわれが扱っている相手は二つある。
一つは停止したものとしての情報
もう一つは変わっていくものとしてのシステム
p16
非常にやさしくいうと、イカをスルメにするのが生物学です。
スルメとは止まっている対象物で、イカというのは生きている対象物です。
こんなレビューは許されるのかな。
とにかく、軽い本に見えるが、実はほどよく重いのだ。
人口と自然という問題について語られている部分が
興味深かったところです。
人が自然について語るとき、人間自身が自然に組み入れられるべきか
どうか、深く考慮されていないという指摘には、感心しました。
それと、養老さんが言語について、「同一化」という言葉で
説明されていますが、これは、
最近出版された茂木健一郎さんの「意識とは何か」という本で、
意識成り立ちを説明するのに「生成」といわれていたものと、
重なるように思われ、参考になりました。
読むだけ時間とお金の無駄です。養老じいちゃんのバカ話、それに相づちをうつ、... 続きを読む
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