都市に住む青年の孤独の物語だ。
まず主人公のうつろな視線が印象的。登場人物は押しなべて表情が乏しく、物語も淡々と進む。
彼が次第に犯罪に走り深みにはまっていく姿が醸し出す孤独が凄い。彼の空虚な生活描写と独白にスリの驚異的な描写が交わり緊張感溢れるストイックな映画となっている。
理由や動機などの説明はない、社会に対する怒りのような彼の人生哲学が語られるのみだ。…彼はなぜここまで孤独になってしまうのか。数少なくとも友人は存在し、母の愛も受けていた様子なのに。
次第にスリが上達しスリの仲間も出来るが、そこにコミュニケーションの喜びはない。虚ろに寂しく一人で生きているだけだ。
犯罪で得た金を使って束の間の喜びを得た描写もない(字幕では『金と女に消えた』とあるが…。本当に楽しかったのだろうか…)。
映画のなかで、主人公は表情も変えず、生活には喜びもなく…そう考えると痛々しい。
ラスト、面会の場で少女と格子越しに触れ合う時に彼にかすかに安堵の表情が現れる。
彼の表情にあらわれる人間らしい感情…孤独に彩られたこの映画にふさわしいラストだ。
映像特典には、
公開当時のブレッソンインタヴューや2003現在の役者のインタヴュー、スリのシーンで驚異の手さばきを見せた奇術師のテレビショーの一部などがあり、なかなか興味深い。