川端康成の「眠れる美女」を翻案したオーストラリア映画ということになっているが、エンドクレジットからは YASUNARI KAWABATA の文字を見つけることはできなかった(見逃したのかもしれないが)。川端の「眠れる美女」を読んだことのある者にとっては「なるほど」と思わせる場面はあるものの、全体を通して見るとオリジナル作品といっても差し支えないような気がした。おそらく川端ならずとも似たような設定は思いつくであろうし、似たような設定の小説や映画は少なくないに違いない。だからこの作品も、ことさら川端の「眠れる美女」がオリジナルであることを声高に叫ぶ必要はないのだ。もっとも、日本でこの作品を売るにはいまだに「川端康成ブランド」は効果があるのだろうが。
さて、この作品の主人公はエミリー・ブラウニングが演じる女子大生ルーシーなのだが、彼女が何を考えているのかがさっぱり伝わらない。彼女の境遇や病気で死んでしまうボーイフレンドとの関係も説明不足。単に苦学生が金に困ってバイトをしているだけなら「禁断の悦び」でも何でもない。クララの館に集う老人たちにはオリジナルに通じる哀感もあるのだが、感情移入の対象ではない。文字通り身体を張った熱演のエミリー・ブラウニングも「エンジェル・ウォーズ」ほどの魅力は感じられなかった。結局、副題にだまされたということになるのかも。
ちなみにオリジナルを同じくする邦画には1996年の「眠れる美女」があり、原田芳雄と大西結花が主演したこの作品の方が私にとっては印象深い(古くは1968年に香山美子が主演した同名作品もあるようだが)。残念ながらDVD化はされていないようだが、耽美的な雰囲気と官能度はこちらの方がはるかに上のような気がする。