今この世界を形成している様々な構造的矛盾や不条理を飲み込みながら増殖している都市の癌――スラム。
本書はその問題に対し、極めて高い可能性として人類の悲観的な未来を示唆し、警鐘を鳴らしている。
21世紀、人類の存在を脅かすものは「貧困」そのものである、と。
そこから発生する都市の限界的様相がスラムである。
都市はもはや労働供給装置ではない。しかし、人々は都市におけるニッチや周縁に集まって住む以外に生きる選択肢はない。
あるいは農村や漁村に都市が侵食していき、先住者のそれまでの生活を破壊しスラム居住者へと変えてしまう。
社会から見捨てられ這い上がることも叶わない絶望的な貧困は反社会的な活動(テロや暴動や内戦など)を生み、
インフラなど存在せずなおかつ何十何百万もの人間が僅かなエリアに住むような極めて高密度な状況は
重大な環境問題を引き起こし危険な病原体の培養器ともなる。
そしてこの深刻な現象は様々な形で今後世界のあらゆる地域に加速度を増しながら及んでいくのであろうと確信せざるを得ない。
一方で、人が創り出した経済システムによって、搾取のためほぼ意図的に「貧困」が生産され続けているからだ。
深く考えさせられる本だと思う。
なお、本書は『建築雑誌』(日本建築学会が発行する月刊誌)に取り上げられており、
2011年1月には未来のスラムと題した特集にて、何人かの建築家の対談、論文の寄稿などがされている。