本書の表と裏と背の表紙はそれぞれ分厚いボール紙で出来ていて、ちょうど3枚の板を繋ぎ合わせたような特殊な製本になっています。必要最小限の要素を使って最大限の機能性を発揮する、シンプルで力強くて、その上美しいスイス・デザインを象徴するようなブック・デザインとなっているのです。(ちなみに、表紙のタイトルは横長の向きになっていますが、本の中身は普通に縦長の見開きです。)
本書は2005年9月から開催された展覧会「スモール&ビューティフル:スイス・デザインの現在」の展示内容を下敷きにした構成だということですが、幅広い領域に渡るスイス・デザインの全貌を過去から現在まで俯瞰できるような内容になっていて、コンパクトなデザイン辞典といってもよいくらいです。ただ、出展全リストを見ると、本文ページでは紹介されなかったアイテムもまだたくさんあったようなので、写真だけでも全て掲載されていれば更に完璧なものになったと思います。
紹介されるデザイン・アイテムは、「ダウンサイジング」「身体の延長」「観光のデザイン」「デザインの普遍性」「ライフスタイルの創造」「タイポグラフィックの伝統」というカテゴリーに分類され、豊富な写真はまるで商品カタログを眺めているような楽しさがあります。日本でもよく知られた商品が意外にもスイス・デザインであったとか、紙幣やパスポートや字体といった日用品のレベルまでもがデザインで括られるほど一貫したデザイン思想があるのか、といったような驚きも味わえ、スイスの豊かさを垣間見るようでした。
スイス・メーカーとしてクローズアップされるのは、「スウォッチ」「USM」「ネフ」「ヴィクトリノクス」「フライターグ」。収録されたエッセイ「デザインとスイス」「スイス人デザイナーの過去と現在」「スイス・タイポグラフィーとその後」「クリス・アンド・クロスの智慧」も、要領よく簡潔にまとめられています。