「アメリカにとって、同盟を維持し、ネットワークを形成する能力がハード・パワーとソフト・パワーの重要な要因になる」。
ソフトパワー論で一世を風靡したナイの新たな著作。スマートパワーは、軍事力などのハードパワーの資源とソフトパワーの資源を組み合わせた総合戦略で、オバマ政権が掲げた方針でもある。特にその活用には状況と戦略が重要だという。関係性にもとづいて力を3つの側面で説明している部分や、ソフトパワーについての世間の誤解を正しているところもある。
軍事力、経済力、力の拡散、サイバー世界の影響力、力の移行、そしてスマートパワー。様々な分野の知識や見解を幅広く総動員し、一見複雑な国際関係とその行方及び戦略を、ソフトパワーとハードパワーという2つを軸に整理して説明しているのでわかりやすい。
中心に論じられているのはアメリカであり、巷に広がる没落論を否定している。しかし、今後のアメリカは単独で世界を圧倒するというよりも、EUや日本という同盟国との関係を中心にハードパワーとソフトパワーを組み合わせて大国としての影響力を維持するとしている。一方、「BRICという略語の核心は中国の勃興なのである」とあるように、中国についてもかなりページを割いている。ただし、その問題点についても冷静に分析していて、成長は次第に鈍化し、簡単にアメリカを超えるということは無いと見ている。また、中国はソフトパワーの強化をはかっているが、あまり効果を上げていないという。21世紀ではソフトパワーの重要性は高まるが、その成功のポイントは相手がどう考え受け止めるかになるし、信頼も重要で時間もかかる。例えば、アメリカがテロと対峙する場合はテロの中枢にハードパワーを使うと同時に、イスラム主流派の心をつかむ必要があるという。
全体的にはそれほど意外感のない常識的な主張である。ただ、スマートパワーという国際関係を理解する上で役に立つ概念についての知見を得られる。尚、本書には日本もよく登場する。