一昨年の今頃は、スマートグリッドの話をしても、なかなかピンと来る人は少なかった。それがあっという間に、さまざまな業界で話題にのぼるようになった。電気やガスだけではなく、建築や設計、電機、環境など、幅広い範囲に及ぶ。では、スマートグリッドとは何か。これに正確に答えられる人は少ないだろう。それどころか、人によってスマートグリッドの定義や概念が違うとも言えそうだ。
こうした状況にあるスマートグリッドについて、手に取りやすい解説本ということになる。コンパクトだが、要点を押さえていて、何より、スマートグリッドの概念が、電気事業のあり方を変えてしまう可能性すらあるというのが、本書の立場である。したがって、技術論にばかり傾いている国内の論調とは一線を画すものがある。
こうした点は、欧米の動向についてていねいに紹介していることからもうかがえる。オバマ米大統領がスマートグリッドというとき、それは州間高速道路、情報ネットワークに次ぐインフラ整備という位置付けだ。日本と欧米、あるいは途上国とでは、電力供給システムが異なっている。しかし、だからといって日本にはスマートグリッドは不要ということにはならない。日本らしい、より質の高いエネルギーサービスの登場は望まれているし、また日本企業がこの分野で世界に進出していくこと、標準化される部分を支配することは、極めて重要なことだ。本書をきっかけにして、エネルギー業界人には、将来のエネルギービジネスの姿をイメージし、理想とする姿に向けて、積極的な事業展開を期待したい。