著者の「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」は、行政の専門知の欠如とその理由の指摘などに共感をもって読むことができたのですが、本書は読後、後味の悪さだけが残りました。
技術開発の実務経験のある人ならば理解いただけることなのですが、最初から全てがわかった技術開発、成功が保証された技術開発はありません。プロジェクトを進めていく中で個々の要素ができ、着手時にわからなかったものが見えてき、対応をはかりながら一歩一歩進められるのが実際です。本書の後味の悪さは命を賭してミッションに挑む宇宙飛行士に払うべき敬意、そして苦しみながら開発に携わったエンジニアに対して最低限払うべき敬意が、「これでもか」、「これでもか」と繰り返される批判から感じられないことによります。
スペースシャトルの退役のニュースから企画された本と思いますが、出版を急いだためでしょうか、拙速な内容に思われます。日経BPの元記者として白黒つけて書くのが習い性となっているのかもしれませんが、エンジニアにも共感できるように推考して書いていてくれたら本書に対するレビューアーの評価は変わっていたと思います。
スペースシャトルの開発の歴史は Dennis R. Jenkinsの"Space Shuttle"、スペースシャトル「チャレンジャー」の事故は、Diane Vaughanの"The Challenger Launch Decision"、そして過去の有人飛行に関する事故はDavid Shaylerの"Disasters and Accidents in Manned Spaceflight"が参考となります。ご関心のある方はご一読ください。